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日本を元気にする新・経営学教室

正しい意思決定のために「機会費用」を把握し
利益を生み出す方策を考える
京都大学大学院経営管理研究部教授 成生達彦

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],平野光俊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],根来龍之 [早稲田大学ビジネススクール教授、同ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長],松尾 睦 [北海道大学大学院教授],髙木晴夫
【第41回】 2012年1月16日
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 四半世紀ほど前のことであるが、小売業を営む老店主は、営業を続ける理由として、「商品を仕入れておけば、それが売れて、日銭が入ってくる。光熱費は少しかかるが、それ以外には費用はかからない。だから損しない」と述べた。読者は、この老店主の考えをどう思われるか?

 今回は、前回のコラムで取り上げた「機会費用」をふまえて、老店主の考えについて検討する。

機会費用とは「諦めた利得」のこと

 人はさまざまな意思決定を行っている。サラリーマンの家計では、毎月の給与で生活に必要な財やサービスを購入している。前回のコラムで取り上げたように、高校を卒業すれば、大学に進学するか、就職するかの選択に直面する。

 また、企業に就職して財務を担当すれば、企業内に蓄積された資金を銀行に預金するか、株や債券などの金融資産に投資するかを選択するし、販売を担当すれば、与えられた販売促進費を広告に使うか、リベートなど流通チャネルの整備に使うか、あるいは小売価格の値引きに使うかという意思決定に直面する。さらに、人事を担当すれば、従業員の配属を決めることになろう。

 これらの意思決定はすべて、代替的な用途を持つ希少な資源をいかに配分するかという選択である。代替的用途を持つ希少な資源は、最初の例では給与(カネ)、2つ目の例では二十歳前後の4年間という時間、最後の例では従業員(ヒト)である。

 前回のコラムで述べたように、代替的な用途を持つ希少な資源は、それを特定の用途に用いれば、他の用途に用いることができない。特定の用途に用いるということは、他の用途に用いることを諦めることを意味する。すなわち、他の用途に用いたならば得られたであろう利得を諦めることになる。この「諦めた利得」が機会費用である。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

平野光俊(ひらの みつとし) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1980年早稲田大学商学部卒業、94年神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、98年同大学院博士課程修了、博士(経営学)、2002年から同大学院助教授、2006年から現職。経営行動科学学会会長、日本労務学会常任理事、日本労働研究雑誌編集委員。主著に『日本型人事管理』中央経済社。

根来 龍之(ねごろ たつゆき) [早稲田大学ビジネススクール教授、同ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)、早稲田大学IT戦略研究所所長]

京都大学卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了、鉄鋼会社、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て現職。京経営情報学会会長、国際CIO学会誌編集長、CRM協議会副理事などを歴任。2001年度より早稲田大学教授。2010年10月より早稲田大学ビジネススクール・ディレクター。ITと経営、ビジネスモデルなどを研究テーマとする。『代替品の戦略』(東洋経済新報社)、『デジタル時代の経営戦略』(共編著、メディアセレクト)、『CIOのための情報・経営戦略』(共編著、中央経済社)など著書多数。ブログ「ITと経営」

松尾 睦 [北海道大学大学院教授]

まつお・まこと 1988年小樽商科大学商学部卒業。2004年ランカスター大学経営大学院博士課程修了。Ph.D. (in Management Learning)。神戸大学大学院経営学研究科・教授を経て現職。


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好評だった経営学教室の新シリーズ。新たな筆者お二人を迎えて、スタートする。国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入している。日本企業に漂う閉塞感を突破するには、何がキーとなるのか。著名ビジネススクールの気鋭の教授陣が、リレー形式で問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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