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岸博幸のクリエイティブ国富論

法案抗議のブラックアウトは是認できるか
米国ネット企業の暴走を考える

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第170回】 2012年1月20日
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 米国では、ネット上の違法サイトを取り締まる法案に対するネット企業の抗議行動が激しくなっています。日本では、どのネット企業がどういうアクションを起こしたという報道ばかりですが、この騒ぎからいくつかの重要な教訓を学べるのではないでしょうか。

SOPA法案とPIPA法案

 最初にこれまでの経緯と事実関係を簡単に整理しておきます。

 コンテンツ産業はネットの普及に伴い、違法コンテンツの氾濫とそれによる所得機会の低下に苦しんできました。そうした中、ハリウッドは過去4年以上にわたり、違法コンテンツを提供するサイトを取り締まる法案の制定を求めてきました。具体的には、Motion Picture Association of America(米国映画協会)とUS Chamber of Commerce(全米商工会議所)がワシントンで議会に強烈なロビイングを行ってきたのです。

 それを受け、下院は30名の超党派の議員の支持により”Stop Online Piracy Act”(SOPA法案)を、そして上院は40名の超党派の議員の支持により”Protect IP Act”(PIPA法案)を起草しました。

 これら2つの法案の内容は基本的に同じです。米国のコンテンツを違法に提供する海外のサイトを撲滅すべく、検索エンジンやISPが海外の違法サイトへのリンクを貼ったりユーザを誘導すること、さらにはオンライン決済事業者やネット広告事業者が違法サイトサービスを提供することを禁じるとともに、個人や企業が違法コンテンツの提供の停止を求めて裁判所に訴え出ることを認めています。

米国ネット企業の抗議行動

 しかし、この2つの法案に対して米国ネット業界は当初から強い拒否反応を示しています。この法案がネット上での検閲を可能にし、検索エンジンなどに警察の役割を求めており、言論の自由を侵害するとともに技術革新を阻害するというのが、その理由です。

 ネット業界の具体的な抗議行動としては、昨年12月にグーグルやツイッターなどの創業者が連名で議会に対してオープンレターを提出し、法案は中国やイランと同様のネット規制と検閲を行うものだと非難しました。

 そして、今年に入って、先週土曜日にオバマ政権が法案への反対姿勢(違法サイトの撲滅は必要だが、民間による自主的な手段が望ましい)を明確にすると、抗議行動は一気に過激になりました。

 今週水曜にはWikipedia、Reddit、MoveOn, BoingBoing, Cheezburger Networkなどの著名なサイトが同時に丸1日ブラックアウト(サイトの閉鎖)しました。グーグルは、米国版トップページ上で”Google”のロゴを黒く塗りつぶしました。雑誌Wiredのサイトに至っては、記事のタイトルも黒く塗りつぶしています。また、ニューヨークでは、当地の技術者の集団であるNew York Tech Meetupの数百人がデモを行いました。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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