Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線
【第3回】 2012年1月24日
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渡辺珠子 [日本総合研究所創発戦略センター マネジャー]

低所得層市場への
「ラストマイル克服」に必要な5つの視点 日本総合研究所創発戦略センター副主任研究員 渡辺珠子

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前回、農村部やインフラの行き届いていない都市部の低所得層地域(スラム)の隅々まで、商品とサービスを届ける「ラストマイルへのリーチ」について述べた。今回は新興国市場の低所得層市場におけるラストマイルへのリーチについて、富裕層・中間層市場のリーチとの違いについて述べると共に、その攻略に必要な視点に関して述べてみたい。

インフラと知識が欠乏する市場が
ビジネスの舞台

わたなべ・たまこ/名古屋大学大学院国際開発研究科修了後、メーカー系シンクタンクにて中国を中心としたアジア諸国のマクロ経済動向調査、ODA関連調査等に携わる。2008年に日本総合研究所入社。09年度に国際協力機構のBOPビジネス促進制度に関する制度設計に従事。現在、主に日本企業の新興国におけるソーシャル・ビジネス立上げを支援している。

 ラストマイルにリーチする難しさの一つは、届けるための物理的なインフラが整備されていないことに起因する。幹線道路やその先の道がないだけではない。物流業者や倉庫や店舗といった流通チャネルも存在しないか未発達である。そもそも地図がないために、物流網の設計すらままならないことも多い。

 金融、医療、教育などサービスのラストマイルを充足するのに必要な電力や通信インフラも不十分である。計画停電ならぬ、計画「送電」が日常という世界なのだ。こういった地域に住む人々にとっては、ATM(現金自動預け払い機)での預貯金は夢のまた夢、ということになる。

 もう一つ、考慮すべき要因がある。それは商品やサービスの利用に至る知識と経験がない、もしくは極めて乏しい人々が多いことである。例えば浄水器。最近では新興国や途上国の中間層以上の人々も、飲料水をボトルで購入することが一般的になってきた。浄化処理された、きれいな水を摂取する方が、健康面で安全であることを知っているからだ。こういう人々には浄水器を売りやすい。

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渡辺珠子 [日本総合研究所創発戦略センター マネジャー]

わたなべ たまこ/名古屋大学大学院 国際開発研究科(国際開発専攻)修了後、メーカー系シンクタンクにて中国を中心としたアジア諸国のマクロ経済動向調査、ODA関連調査等に携わる。2008年に日本総合研究所入社。09年度に国際協力機構のBOPビジネス促進制度に関する制度設計に従事。現在、主に日本企業の新興国におけるソーシャル・ビジネス立上げを支援している。


Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線

日本で「ソーシャルビジネス」という言葉が紹介された当初は、海外から持ち込まれるカタカナ経営用語の一つというとらえ方をされていた。だが昨今話題になるソーシャル・ビジネスは、「地域社会やコミュニティが抱える社会的課題を解決する」という面だけではなく、「社会構造を根本的に変える」イノベーティブな発想も内包する。市場のルール自体を変えるチェンジメイカーだ。インド、中国内陸部、アフリカ、東南アジアにおけるソーシャルビジネスの最新事例を基に、日本総研の女性チームがその実体験と分析を紹介する。

「Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線」

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