Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線
【第9回】 2012年4月17日
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渡辺珠子 [日本総合研究所創発戦略センター マネジャー]

売上拡大だけが効用ではない
ソーシャルビジネスで「自社力」を強化する 日本総合研究所創発戦略センター副主任研究員 渡辺珠子

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本連載では、ソーシャルビジネスの様々な側面をテーマに、これまで8回にわたってお話させていただいた。お読みいただいている方々の中には、新興国での市場を拡大し、優位に立つためのヒントになるのではと期待して、お読み下さっている方もいるだろう。そういった読者の方々を思い浮かべながら、これまではソーシャルビジネスの現場の様子や実際の取り組み方を中心についてお伝えしてきた。今回は少し観点を変えて、日本の本社内で、ソーシャルビジネスにどう取り込むかを概観したい。

ソーシャルビジネスに
立ちはだかる3つの壁

 ソーシャルビジネスでは、新興国の低所得層が顧客の大半であり、かつ彼らをビジネスのパートナーと捉えるため、どうしても「今までのやり方じゃ通用しない、どうやってビジネスを始めたらいいんだ?」という大いなる疑問の解決ばかりに注目しがちだ。しかし視野を広げてみると、ビジネスとして成立させる以外に、取り組む意義を見出せることに気が付く。

 筆者や筆者のチームの実感として、ソーシャルビジネスを日本企業が進めようとするとき、立ちはだかる壁が3つある。それは「売り上げ確保の壁」「製品・サービス改変の壁」「組織の壁」。これら壁を乗り越えた先で、ソーシャルビジネスがようやく立ち上がり、続いていく。逆を言えば、ソーシャルビジネスを立ち上げる前に、3つもの壁(しかもかなり強固な壁!!!)を乗り越えなくてはいけない。

売り上げ確保の壁は
見方をかえれば壁ならず

 ソーシャルビジネスは、対象顧客が低所得層であるため、低価格での提供が求められるし、流通・販売に手間がかかる場合が多く、総じて急に大きな収益を見込めない。しかし、これまで出会った日本企業の方々からは「3年で単独黒字を目標にしないと会社がOKと言わない」「せめて3年で収支トントンにしたい」という声をよく聞く。申し訳ないが、そんなに簡単に収益を上げた企業は、世界中を眺めてみても見当たらない。

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渡辺珠子 [日本総合研究所創発戦略センター マネジャー]

わたなべ たまこ/名古屋大学大学院 国際開発研究科(国際開発専攻)修了後、メーカー系シンクタンクにて中国を中心としたアジア諸国のマクロ経済動向調査、ODA関連調査等に携わる。2008年に日本総合研究所入社。09年度に国際協力機構のBOPビジネス促進制度に関する制度設計に従事。現在、主に日本企業の新興国におけるソーシャル・ビジネス立上げを支援している。


Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線

日本で「ソーシャルビジネス」という言葉が紹介された当初は、海外から持ち込まれるカタカナ経営用語の一つというとらえ方をされていた。だが昨今話題になるソーシャル・ビジネスは、「地域社会やコミュニティが抱える社会的課題を解決する」という面だけではなく、「社会構造を根本的に変える」イノベーティブな発想も内包する。市場のルール自体を変えるチェンジメイカーだ。インド、中国内陸部、アフリカ、東南アジアにおけるソーシャルビジネスの最新事例を基に、日本総研の女性チームがその実体験と分析を紹介する。

「Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線」

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