国税局は「何」を見ているのか?

 国税局というのは、脱税に関する情報収集に余念がない。当たり前である、彼らのお仕事なのだから。

 仮想通貨の損益情報は、取引所や販売所に行けば大体はわかる。問題は、個人間取引や外国の取引所・販売所を利用した取引である。ノード(ネット上につながっているPCやハブなどの機器)を特定して追跡すれば、追跡調査はある程度可能だ。ただし、仮名・借名取引、ノードの特定ができない手法などの取引にあっては、「帰属を割る」(真の取引者を特定する)のは困難だ。帰属が割れたとしても時効の壁がある。筆者は東京国税局の「電子商取引専門調査チーム」の創設メンバーで、ネット取引の調査手法開発などに携わった経験があるので、こういった案件が調査困難なのは承知している。

 いまのところ、仮想通貨については源泉徴収票などの調書(取引所・営業所などの支払者が税務署に報告する書類)にはなっていない。

 参考までにFXのときはどうだったかというと、当初は調書の対象ではなかったが、申告漏れが多く、すぐに制度化された。制度化されると「申告しないとバレますよ」という風評が広がって申告水準が高くなった。どうせバレるなら申告したほうがいいに決まっているからだ。ちなみに、調書提出義務が導入される前は、無申告や過少申告が散見された。金額によっては国税局査察部(マルサ)により刑事告発されている。

 仮想通貨のケースもFX同様、多額の申告漏れをした脱税者に対しては、国税局査察部が処理することになるだろう。一罰百戒、人身御供、さらし者。いろんな言い方があるが、申告水準を高めるにはマスコミリリースが一番である。

 国税当局はどこまで「億り人」のデータを持っているのか?

 少なくても国内の大手取引所・販売所のデータは既に入手しているだろう。来年の今頃には仮想通貨の脱税ニュースが流れているのではないか。余談ではあるが、FXで儲けた人の大半は翌年に同額以上の損失を出していた。2億円の所得隠しをして追徴されても、利益金までポジションに突っ込んでいて納税資金がないというわけだ。赤字の年は何の救済もなく目も当てられない悲惨な状況だった。仮想通貨も似たような道をたどるのだろうか。