今回のCESでの発表は、来るべき変化への備えという意味合いが大きい。必要な武器は用意しておき、モビリティ革命やMaaS社会が実現したときに、自らサービスプラットフォームを持ち、他業種に自動車とモビリティのイニシアティブをとらせない布陣と表明である。

 仮にシェアリングをはじめとするMaaS市場が成立、拡大していったとしても、MaaSが自動車エコシステム、移動交通エコシステムのすべてではない。所有対象としてのクルマが消滅するわけではないのだ。MaaS対応は、トヨタにとって事業ドメインをひとつ増やす、という程度の話かもしれない。

従来の製造業感覚では「やけど」する

 トヨタのプラットフォーム構想の懸念材料も見ておく。

 まず、この構想の実現にかかる時間は10年単位の長期的なものになる。一方で、変化の早い現代において、長期計画は時間とともにピボットしていくことが前提だ。モビリティサービスのプラットフォームが今後どのように発展するかは誰にもわからない。短期での計画の見直し、ソフトウェア開発で主流になりつつあるアジャイル開発のような柔軟性は上流の経営戦略の時点で必要だ。

 次に、プラットフォーマ―になることへのハードルの高さだ。これは、トヨタの規模やブランドをもってしても難しい。e-Palette ConceptやMSPFがいくらオープンといっても、標準的なサービスや開発環境、システムがどの程度使えるのかが現段階では見えない。オープンといいながら、自社製品やサービスがフルラインナップされているだけでは、多くのサービスプロバイダーやベンチャー企業は食指を動かさない。安く自由度が高い汎用クラウドとオープンシステムで作ったほうが良いという判断は当然あるだろう。

 そしてクラウドやインターネットサービスで最も難しいのは、いかにマネタイズするかだ。

 トヨタとしては車両周辺のデバイスビジネス(EV台車やそのカスタマイズ)でマネタイズできれば、インフラまわり、クラウド利用などでは利益が出なくてもいいと考えるかもしれない。しかしこの場合、オープンの度合いが制限される可能性が高い。クラウドはオープンだが使えるデバイスがトヨタ縛りになると厳しい。