逆に、クラウド利用やAPI利用(課金、サブスクライブ)などをマネタイズの柱とした場合はどうだろうか。デバイスはトヨタに制限する必要はなくなるが、このモデルで成功するには、デバイスに比べて単価が低い分、マスマーケットを押さえる必要がある。海外の主要OEMメーカーが利用するくらいの規模が必要だ。それができないと、各社が独自に展開しているクローズドなクラウド基盤と競争することになる。

 従来の製造業の感覚で、プラットフォームビジネス(たとえ広告収入など副次的な要素があったとしても)を手掛けても、やけどをするのがオチだ。

日産、フォルクスワーゲンらが
プラットフォーム事業に踏み込まない理由

 ちなみに、10年以上前、類似のコンセプトをカーテレマティクスで実現しようとしていたのが、日産のカーウィングスだ。クルマが自由にインターネットにつながることができない時代に、プラットフォームを公開し、カーウィングスの中にインターネットと同じ世界を作ろうとしていた時期があった。当時は業界内でもその真価や可能性を評価できる人はいなかった。しかし、コンセプトは当時のG-BOOKより数段先行しており(市場がついてこられなかったが)、日産はMSPFと同等なものをすでに持っているといえる。

 日産は、カーウィングスというインフラとその知見を持っているが、その上で、自動運転でもシェアリングでもサービスプラットフォームは既存のインフラを利用する戦略をとっている。

 いずれにせよ、プラットフォームビジネスでの成功は極めて難しい。フォルクスワーゲン、フォード、GM、ダイムラーなどが、トヨタほど踏み込まないのは相当な理由と戦略があるからだろう。クラウドやサービスインフラは、自前で持つよりアライアンスや契約で利用したほうが合理的。とくにインフラになるようなものは、維持コストが膨大で、覇権を握ればリターンが大きい分、すべてを抱え込むリスクもまた巨大だ。

 トヨタがe-Palette ConceptやMSPFを成功させたいなら、たとえば、現在のカンパニー制をさらに推し進め、自動車製造、販売会社を独立企業として分離し(以前のトヨタはメーカーと販社が分離していた)、さらに現状のコネクティッドカンパニーをベースに、関連子会社やR&Dを再編してモビリティ会社を設立するくらいの構造改革が必要かもしれない。電動車、内燃機関、セールス、シェアリング、クラウドなどと細分化してもよい。Googleは、アルファベットという持ち株会社を作り、検索事業やメディア事業(YouTube)を分離させている。

 自動車業界からすれば荒唐無稽な絵空事かもしれないが、クラウドサービスのプラットフォーム市場で本気で闘うならば、自社の再編や変革のタイミングを逃してしまっては、生き残れないだろう。

(ITジャーナリスト・ライター 中尾真二)