生活習慣病を発症する諸悪の根源として、冷たい視線にさらされてきたメタボ。ところが、標準よりちょっと“お太りさま”のほうが、実は健康で長生きできるというデータもある。だが、厚生労働省の都合で、メタボ認定されれば、治療対象にされてしまっている現実がある。
「肥満外来」がある愛誠病院(東京都板橋区、台東区)の静脈瘤センター統括医師の新見正則氏は、1万人以上の肥満の患者を診てきた。その経験から「痩せている人よりも、太っている人のほうが元気で長生きするケースが少なくありません」と語る。
新見氏の友人でもある88歳女性は、70歳のとき、肝臓にがんが見つかった。大腸がんからの転移だと判明し、進行度はステージ4の末期だった。女性は大腸と肝臓の転移を切除する手術を受けたが、抗がん剤の投与は拒否。だが、今も元気だ。新見氏によれば、この女性は、「身長が155センチでBMIが28」というから、逆算すると体重は67~68キロとぽっちゃり型なのだ。新見氏がこう語る。
「医師から抗がん剤の有効性は40%と説明され、じゃあ60%は体に悪さをするんだと直感的に思ってお断りしたという。医師が勧める治療を拒否できる人は、なかなかいるものではありません。余命宣告もされていたのに88歳になった今もお元気で、脳トレや中国語の勉強をされています。人はいろいろで、治療法やデータがすべての人に当てはまるとは限らないのです」