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出口治明の提言:日本の優先順位

若者が海外留学をしたがらない原因は、
日本企業の内向き体質にある

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第35回】 2012年1月31日
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 わが国の最近の傾向として、海外留学を志望する学生が減っており、2004年に比べると2008年では全体で2割に減少したという。常時、わが国の海外留学生の3分の1以上を占めている米国への留学生に限って見ると(2010年度)、米国への留学生が多い国は、中国がトップで15万7000人(対前年23.5%増)、以下、インド、韓国、カナダ、台湾、サウジアラビアと続き、日本は第7位、2万1000人(対前年14.3%減)でしかない。これは、学生数で見ると、中国の約7分の1、わが国のピーク時(1997年度)のわずか45%の水準でしかない(以上の計数は、朝日新聞2012年1月29日朝刊による)。

留学生の減少で困ることは何か

 ところで、このような海外留学生の減少傾向は、わが国の将来にどのような影響を及ぼすのだろうか。私見では、長期的に考えると、外交や安全保障面での影響が最も大きくなるのではないかと懸念する。外交の巧拙や一国の安全保障は、つまるところ、他国に仲の良い頼りになる友人がどれだけいるかということによって、大きく左右される。

 有名な事例を一つ挙げてみよう。明治政府の国運を賭けた日露戦争が、比較的上手く終結に持ち込めたのは、伊藤博文の命令を受けた金子堅太郎の米国におけるさまざまな活動が預かって力があったからである。そして、金子堅太郎の活動を支えたのは、当時のアメリカの大統領、セオドア・ルーズベルトとの友情であった。この二人が友情を育んだのは、金子堅太郎がハーバード大学に留学していた時代であったことは言うまでもない。

 わが国では、隣国中国の国力の増大に対抗する観点から、「アメリカと共同して中国に当たろう」という戦略(?)を、喧伝する人が後を絶たないが、留学生が中国の7分の1のレベルで、どうして日米連携が米中連携に勝てると考えられるのか、摩訶不思議でならない。

 ペリー提督の来航目的が、中国との新航路開設を狙ったものであったように、歴史的に見ても米国は中国への関心が高い国であることを忘れてはならない。確かにわが国は米国と軍事同盟を結んでいる。しかし、いかなる同盟であれ、同盟の内実を強固にするものは、両国の人間関係(人的交渉)を置いて他にはないということは、数多くの歴史が教える通りである。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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