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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略

三菱商事とキリンHD、中小企業を事例に
M&Aをキャッシュフローと税の側面から解説

高田直芳 [公認会計士]
【第76回】 2012年2月3日
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 本連載を読んでいる読者であれば、飲料業界のキリンHDの「HD」が「ホールディングス」であり、アサヒGHDの「GHD」が「グループホールディングス」の略称であることは既知の事項になるのだろう。2011年9月期時点で「ホールディングス」や「グループ」を会社名に使用しているものをざっと調べたところ、上場企業約3700社中350社あった。

 「~ホールディングス」や「~グループ」という名称だけでは、その企業が純粋持株会社(他の会社を支配するのが目的)なのか、事業持株会社(本業をも抱えたもの)なのかは判然としない。また、HDやGHDの名称を用いずとも、持株会社形態を採用している企業は数多く存在する。

 例えば三菱商事の場合、11年9月期で連結子会社358社、持分法適用会社205社を傘下に抱える。日立製作所は連結子会社だけで949社にのぼる。

 福沢諭吉翁『文明論之概略』の言を借りるならば、「蘇秦張儀の輩、正に四方に奔走して、あるいはその事を助け、あるいはこれを破り、合従連衡の戦争に忙(せわ)しき世」なれば、持株会社が増えるのも当然の経済現象になるのだろう。

持株会社の増殖を税制面からアプローチする

 なぜ、持株会社が持て囃されるのか。人事管理・資金管理・M&A戦略などを持株会社が行なうことにより「全体最適化を図る」という面もあるだろう。ここでは税制上のメリットに注目したい。

 持株会社の大きな特徴は、子会社からの「剰余金の配当」(会社法453条)を吸い上げる点にある。「剰余金の配当=受取配当金」が、益金不算入になるのは、よく知られている(法人税法23条1項)。法人税法を学ぶとき、「受取配当等の益金不算入」は最初に必ず登場するからだ。

 ところが、その内容が無味乾燥で味気ない。すぐに挫けてしまう。これではいけない、と自分を奮い立たせて再び法人税法を学ぼうとするのだが、やはり「受取配当等の益金不算入」から始めなければならないので、再び挫けてしまう。

 再々度、学び直そうとしても、やはり挫けてしまう。法人税法を知らなくても、「受取配当等の益金不算入」だけは詳しいという人は、案外、多いのではないだろうか。

 注意したいのは、個々の企業が受け取る配当金は、その全額が益金不算入になるわけではない点だ。負債利子(手形の割引手数料を含む)を控除する必要がある(法人税法23条4項)。この「控除負債利子」の分だけ、個々の企業にとっては節税効果が減殺される。

 ところが、グループ法人税制では、負債利子を控除する必要がない(法人税法23条4項)。筆者が、連結確定申告書を作成した際、「持株会社にとっては、大きなメリットだなぁ」と感じたものだ。

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高田直芳 [公認会計士]

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月〜13年10月まで公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行なう。

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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略

大不況により、減収減益や倒産に直面する企業が急増しています。この連載では、あらゆる業界の上場企業を例にとり、どこにもないファイナンス分析の手法を用いて、苦境を克服するための経営戦略を徹底解説します。

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