「これを機に、業界再編が一気に進むのではないか」――。
多くの介護・福祉業界の関係者らは、口を揃える。
1月下旬、有料老人ホーム大手のメッセージが、在宅介護大手のジャパンケアサービスグループに対して、TOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社すると発表したのだ。
ジャパンケアは同意しており、1株345円で買い付け、全株取得を目指す。期限は3月1日までを予定している。
メッセージの今回のTOBの背景には、2012年度から始まる2つの新しい高齢者向け住宅制度がある。
「サービス付き高齢者向け住宅」と、「24時間定期巡回・随時対応型サービス」だ。
サービス付き高齢者向け住宅は、従来の高齢者専用賃貸住宅(高専賃)など、3つの高齢者住宅を制度的に一本化したもの。その名の通り、安否確認や生活相談などのサービスが付いているのが最大の特徴だ。
24時間定期巡回・随時対応型サービスは、ヘルパーや看護師が定期的に巡回し、緊急時には電話対応や訪問を行う24時間体制のサービスだ。介護費用は、定額制を採用している。
サービス付き高齢者向け住宅について、国は普及策を推進している。たとえば、国土交通省はすでに11年度で特別枠として300億円の予算を計上し、3万戸を整備する計画を立てている。
加えて、1戸あたり100万円の補助金のほか、不動産取得税や固定資産税の軽減措置などの税制優遇措置も実施している。
一方、従来、民間型の施設系サービスの中心だった介護付き有料老人ホームは、新規開設が困難になっている。各自治体が介護保険の負担増を抑制するため、介護付き有料老人ホームの建設を「総量規制」によって抑制しているためだ。