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出口治明の提言:日本の優先順位

データを見れば人口減少の深刻さは自明。
なぜ人口を増やす政策を総動員しないのか

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長兼CEO]
【第36回】 2012年2月7日
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 国立社会保障・人口問題研究所は、1月30日、日本の将来人口推計の結果概要を公表した。この推計は、5年毎に行われているもので、将来の出生推移・死亡推移について、それぞれ中位・高位・低位の3仮定を設け、それらの組み合わせにより9通りの推計を行っている。以下では、出生中位・死亡中位のケースを基準として、論じることとする。

生産年齢人口がほぼ半減する社会はサステイナブルか

 まず、最初に結果概要を見ておこう。わが国の将来の総人口は、2048年に1億人を割り込み、2060年には8674万人になる。これは2010年に比べて32%の減少であるが、もし出生率が中位ではなく、低位で推移すれば(1.35%→1.12%)、7997万人(38%減少)と8000万人を割り込んでしまう。

 次に、経済に最も大きな影響を与える生産年齢人口(15~64歳)の推移を見ると、第2次世界大戦後、一貫して増加を続けてきたわが国の生産年齢人口は、1995年にピークをつけ(8726万人)、その後緩やかに低下を続けてきたが(2010年で8173万人と、この15年間で6%減少)、2027年には7000万人、2051年には5000万人を割り込み、2060年には4418万人(対2010年比46%減少)となる。

 ちなみに出生低位推計では、50年後(2060年)の生産年齢人口は3971万人(51%減少)と、4000万人を割り込んでしまう。要するに、わが国の生産年齢人口は、この50年でほぼ半減してしまうのだ。このような社会が果たしてサステイナブル(持続可能)だろうか。大いに疑問なしとしない。働く人が半分になるということは生産性の上昇がなければ、GDPが半分になるということだ。それでこの国がもつと考える方がむしろおかしいのではないか。

 従属人口指数を見ると、問題点はさらにクリアになる。生産年齢人口に対する年少人口と老年人口の相対的な大きさを比較し、生産年齢人口の扶養負担の程度を大まかに表わすための指標として、従属人口指数がよく用いられるが、老年従属人口指数(生産年齢人口100に対する老年人口の比)を見ると、2010年の36.1(働き手2.8人で高齢者1人を扶養。いわゆる騎馬戦型)が、2022年には50.2(同2人で1人を扶養)まで上昇し、2060年には78.4(同1.3人で1人を扶養。いわゆる肩車型)に達するものと見込まれる。

 なお、出生低位推計では、同1.1人で1人を扶養することとなり、ほぼ完全な肩車型社会になる。人類の5000年の歴史の中で、1人が1人を支える社会が存立し得た事例は寡聞にして知らない。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長兼CEO]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の社長であり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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