ハーモニカの世界チャンピオンである大竹英二さん(42歳)が仲間とバンドを組み、ミュージシャンを目指したのは中学生の頃だった。最初はドラムを叩き、次にギターを弾き、さらにはベースもおぼえた。

「要するに、『もっと目立ちたい!』ということで、だんだんと前へ出てきちゃった訳なんです」

 むろん、一番目立つのはボーカルだ。

「だから、一時はボーカルもやっていたんです。だけど、歌が下手で(笑)。何かないかなと探していたら、ハーモニカがありました」

 初期のローリング・ストーンズもビートルズも、ハーモニカを吹いていた。日本では、60年代、70年代のフォークシンガーにとって、ギターを弾き、ハーモニカを吹くことは一つの決まったスタイルでもあった。

「これだ!」とひらめいたものの、この時はまさか、それが生涯をかけた仕事になろうとは夢にも思っていなかった。

金髪ロングヘアに鋲ジャンだった30年前
今では黒髪、パーカーでステージへ

「バンドを組んでいた頃は、黒いスリムのパンツに白いブーツが流行っていたんです。ヒールもこーんな高いやつで」

 と、大竹さんが10代の頃を振り返って話す。

「ひょっとして、髪の毛も立っていました?」

「もちろん、ビンビンのロングヘア、それも金髪で。両手の指はぜーんぶ指輪、腕輪もジャラジャラ。自分に刺さりそうな、鋲の付いた革ジャンも着ていました」

 それから約30年。現在の大竹さんはと言えば、髪は黒くて短く、どちらかと言えばおとなしめ。羽織っているのは「奥さんと兼用」というカジュアルなパーカーである。

「ところで、そのピンクのは?」

 腰に付けている万歩計が気になって訊ねると、大竹さんは笑ってこう言った。

「これ? これは奥さんのおさがりです(笑)」

 男性にしては、小柄な方である。