コインチェック再起の成否を暗示する「140万円紛失事件」過去最大となる仮想通貨の不正流出を起こした、大手取引所のコインチェック。最高執行責任者である大塚雄介氏は被害者への補償時期は「答えられない」と述べるなど、未だ不信感は拭えない Photo:REUTERS/AFLO

流出事件の約1ヵ月前に起こったトラブル

「実は私もあの会社の被害者なんです!」――。斎藤一樹さん(36歳、仮名)は、自分の身に起きたトラブルに憤りを隠さない。

 斎藤さんの言う「あの会社」とは、1月26日に当時のレートで約580億円にも上る仮想通貨の流出事件を起こした、大手取引所のコインチェックだ。

 この流出事件では、仮想通貨の「NEM(ネム)」を、安全性の低いオンライン上の保管場所(=ウォレット)で全額管理していたことが露呈するなど、顧客保護に対する認識の甘さが浮き彫りとなった。

 同社は、2月13日に再発防止策などを盛り込んだ改善計画を金融庁に提出。だが、NEMを盗まれた被害者への補償について「資金を手当てする目処はついた」(大塚雄介最高執行責任者)としつつも、「時期はまだ答えられない」と述べるに留まり、投資家が抱える不信感を拭えたとは言い難い。

 しかも、この流出事件の約1ヵ月前に斎藤さんの身に起こったトラブルは、今回のコインチェックの顧客保護に対する不備をあたかも示唆するかのような内容なのだ。以下に、詳述していこう。