スローガン言葉では行動を起こせない

 私が最近コンサルティングを行うことになった企業で、これまでよく使われていた言葉が、「お客様の立場になって話を聞いて来い」というものでした。

 実際に、販売マニュアルの中にも「お客様の立場になって話を聞く」というフレーズがありました。マニュアルをつくった人は、それで現場が動けると思っているのです。

 しかし、現場の従業員にインタビューすると、ほとんどの人が「どうしていいのかわからない」と答えました。「お客様の立場になって話を聞く」というのは、わかったようでいて極めて抽象的で曖昧な表現なのです。

 そもそも、自分以外の人の立場になるなど物理的に不可能です。不可能なことを、あたかも可能であるかのように表現してしまうのが、スローガン言葉の恐いところです。

「お客様の立場になって話を聞く」とは、具体的にどんな行動をとることなのかをステップ・バイ・ステップで指示しなければなりません。たとえば、「お客様の目を見て」「うなずきながら」話を聞くことは、お客様の立場になる第一歩といえるでしょう。