首都圏で地震が発生する確率が何年で何パーセントといった推計が発表されている。筆者は「地震のリスクを意識したお金の運用」といった取材をよく受ける。

 地震に遭った場合、経済的に考えるとしても、いちばん大切なのは無事に生き残ることだ。週刊ダイヤモンド読者も含めて、ほとんどの人にとって、実質的に最大の資産はお金を稼ぐ自分自身であり、自分の「人的資本」のはずだ。生命の安全が確保できるだろうという前提で、資産の扱い方を考えてみる。

 素朴だが重要なのは、自分の資産とそのありかをいつでもどこでもわかるようにリストアップしておくことだ。預金通帳や保険証券のようなものを持ち出して避難することが常にできるとは限らない。しかし、どこの銀行、証券、保険会社に、どのような名義の口座とID番号で財産をいくら預けているかがわかっていると、通常は、後で自分の資産を引き出すことが可能なはずだ。簡単な財産目録はぜひ作っておきたい。手帳や携帯電話など常時携行するものの中に入れておくといいだろうし、インターネット上のいわゆる「クラウド」に置くのもいい。ただし、パスワードを控えたメモとは別のファイルで管理しよう。

 また、先ほど自分が「生き残る」ことを前提としたが、この前提が満たされないこともありうる。家族がこの財産目録にアクセスできるようにもしておくべきだろう。

 地震と資産運用の関係を考える場合に不動産の問題は深刻だ。先の東日本大震災でも、地盤が液状化して不動産の価値が暴落した地域が首都圏にもあった。自分が住んでいる家であっても個別の物件には大きなリスクがある。