故郷の自宅を目の前に
ホテル住まいをする羽目に

 上海の発展のシンボルでもあった高層マンション群、その美しく彩られていた“化粧”が、静かに剥がれつつある。ついに「安かろう、悪かろう」が露呈し、今、「住めない家」が続出しているのだ。

 こんなことがあった。在日華僑のAさんは、この春節を上海の自宅で過ごそうと帰国したのだが、彼は自宅に帰れなかった。理由は「壁の水漏れで住めない」というものだった。Aさんは「故郷に戻ったというのに自宅に戻れない、まるで旅人のようだった」と振り返る。自分の家を目の前に、ホテル住まいを余儀なくされた。

 90年代後半、上海に平米単価5000元で買った60平米の1LDK。築10年が過ぎた今、住まいのあちこちでトラブルが噴出している。水の出が悪いシャワー、溢れるキッチンの排水溝、リビングの壁からも水漏れ…。Aさんは「新しいシステムキッチンに買い換えればマシになるだろう」と思案した。だが、早い段階でそれがまったく無意味であることが判明した。問題は設備ではなく、「壁の中」に存在していたためだ。

企業の社屋から民家まで
水漏れが社会問題に

 建築物の水漏れは上海のいたる所で社会問題と化している。企業もまた、水漏れに悩まされる。浦東の高層ビルに入るB社職員は「うちは最上階でもないのになぜか雨漏りだ」と、天井から水が漏れてくる現状を訴える。

 日中の建築事情に詳しい専門家は「日本ならポリウレタンやビニール製が使われる配管も、中国では2000年代以降も金属製が多く使われた。錆つきなど劣化が早い」とコメントする。だが、水道管は構造壁の中に埋め込まれ、二次交換ができない。上海の建築物の多くはこうした欠陥を抱えているのだが、所有者に打つ手はない。

 他方、上海に訪れた日本人ビジネスマンが必ず尋ねる、こんな質問がある。