こだわり蕎麦屋めぐり
【第17回】 2012年2月28日 鎌 富志治 [夢ハコンサルティング代表]

小平「吟」――焼葱、納豆、胡麻を合わせた利休蕎麦が人気の粋な店

「参酒」と名付けられた3種の利き酒に、肴は3点盛り合わせ。微粉にこだわった蕎麦の香りと甘みは、ふわっと広がり、はかなく消えていく。その名残惜しさに、ついもう一枚ほしくなる。藍色の暖簾をくぐり、江戸の粋蕎麦をとっくりと味わいたい。

小平駅北口からほんの数分
開店以来、客足の絶えない店がある

 西武新宿沿線には手打ちで知られた店が多い。その中でも、開店当初からすぐに名を上げ、蕎麦特集の本があれば必ずいっていいほど掲載されてきたのが「吟」だ。

「手打ちそば 吟」。小平駅北口から数分。2004年の開店当初から注目を浴び、以後客足が絶えない人気店だ。

 小平駅北口からほんの数分。藍色に染められた暖簾生地に、「吟」の文字が白く浮かび上がっている。藍色の暖簾が朱色の引き戸によく映えて、そのコントラストが蕎麦屋の粋を演出していた。

 戸を開けると2畳ほどの縦長の空間に玉砂利が敷き詰められ、飛び石が並ぶ。茶の湯でいう待合の風情が演出されているようだ。ある人がこの風情を、“すでにそこには蕎麦屋酒の非日常的な入り口がある”と表現していたことを思いだした。

 僅かに音が鳴る玉砂利を踏み、江戸蕎麦の趣を感じながら店に入ると、これから始まる宴に心が弾むようだ。

 店内は4人掛けのテーブルが2つと2人掛けテーブルが2つの12席だけ。この小体な蕎麦屋に、ここ数年客が絶えることが無い。

店内のテーブル席では落ち着いた会食ができる。飾り窓には自筆の額があり、「輪廻転生、そば行路、我がみもそうと憧きがらす」(蕎麦の実も花も茎もすべてが役に立つ、それは自分の蕎麦人生もそうありたい、の意)と書かれていた。蕎麦職人は哲学をする人だった。
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鎌 富志治 [夢ハコンサルティング代表]

大手広告代理店で営業局長やプロモーション局長を歴任後、東京・神田須田町で手打ち蕎麦屋「夢八」を開店する(現在は閉店)。現在は企業経営コンサルタント、蕎麦コンサルタントとして活躍中。著書に『こだわり蕎麦屋の始め方』(ダイヤモンド社)がある。
◎ブログ:蕎麦の散歩道


こだわり蕎麦屋めぐり

酒と料理と極上の蕎麦。思わず誰かを連れて行きたくなる、五つ星のもてなしが楽しめる手打ち蕎麦屋。蕎麦が美味いのは当たり前、さらにはそこでしか味わえない料理ともてなしがある店ばかりを厳選。付き合いや接待に良し、大事な人と大事な日に行くも良し。店主がこだわり抜いた極上店の魅力とその楽しみ方を紹介する。

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