家電業界では最近、中堅メーカーが躍進を遂げている。その理由は何なのか?なかでも冷蔵庫、洗濯機といったコモデティ化したはずの市場に、新商品を投入してヒットを連発しているツインバードに注目し、業績急伸の理由と、その開発手法を探った。(経済ジャーナリスト 夏目幸明)

冷凍室が大きい冷蔵庫や
1人分を10分で洗える洗濯機が大ヒット

半分が冷凍室の冷蔵庫…ニッチ家電がモノ余り時代でも売れる理由安価な家電を販売するメーカーという印象はもう昔のもの。今や、“ありそうでなかった”ニッチ商品で攻める家電メーカーに生まれ変わった(写真は野水社長)

「ツインバード」という社名にどんなイメージをお持ちだろうか?アイロンやトースターなどの小物家電を、大手メーカーより安価で販売する企業――というのは今や昔。同社は2011年に父より事業承継した野水重明社長のもと、マーケティング主軸の企業に生まれ変わっているのだ。

「当社の従業員数は約300人、売上高は約140億円で、東証二部に上場しているとはいえ、家電メーカーとしては決して大規模ではありません。しかし、この規模だからこそ得意なことがあるんです。それは『小ロット多品種』生産。当社は大企業と違って生産設備が大規模ではありません。大手さんなら数万ロットからでなければ生産できないものも、当社なら数千ロットから商品化できるんです」(野水重明社長)

 この特徴が有利に働く。なぜなら現在は、すべての業種で「個食化」の影響が見られるからだ。個食化とは「1人で食事をとる機会が増える」ことを指し、最近、その影響が食品以外の業種にも広がりつつあるのだ。商品企画担当の岡田剛氏が話す。

「家電の業界でも、ユーザーの価値観や生活スタイルが多様化しているんです。だから当社は近年、『小ロット多品種』生産を活かし、“ありそうでなかった”、“私にピッタリ”な商品をつくっているんです」

 例えば、同社が17年11月に発売した『2ドア冷凍冷蔵庫 ハーフ&ハーフ』だ。

「この商品、スペースの半分が冷凍室なんです。現在、単身世帯が増加し続け、その多くで冷凍ニーズが高まっています。最近とみにおいしくなっている冷凍食品を活用する方や、特売で食品をまとめ買いし、大量に調理して凍らせておく方が増えているんです。すなわち“冷蔵スペースは余裕があるのに、冷凍スペースはパンパン”な方が多い。そこで我々は『ハーフ&ハーフ』でスーパーの買い物かご約2個分の冷凍食品を収納可能にしました」(岡田氏)

 また同社は同じ時期、洗濯機の市場にも、約1kg(およそ1日分の日常着)の洗濯物を、なんと10分で洗える「快速モード」を搭載した『全自動洗濯機 5.5kg 』を投入している。

「忙しい朝や、帰りが遅かった夜、気軽にお使いいただけます。また家族で使う場合、自分のものは自分で洗えますし、色柄ものだけ分けて洗うこともできます」(岡田氏)

 いずれも、ありそうでなかった商品だ。そして岡田氏によれば、売れ行きは上々。家電量販店のバイヤーから、発売前から「何台ほしい」と具体的な数字を示されるなど強い引き合いがあるという。

「発売後は、生産が追いつかず大変な思いをしました(笑)。当社では年間5000台くらい売れればヒットと言っていいのですが、現在、年間1万台ペースで推移しています」