スペイン・バルセロナで開催されたケータイ産業の世界的な展示会「モバイル・ワールド・コングレス(Mobile World Congress、以下MWC)」のレポートを、前編に引き続いてお送りする。端末の動向等はすでにあちこちで報道されており、本連載では少し視点を変えて、MWCから浮かび上がるケータイ産業の俯瞰図をお伝えしたい。
自らの再定義が日本勢復活のカギ
プレゼンスこそ韓国・中国勢に大きく水を開けられたところだが、MWCでは日本勢の展示も少なくない。NTTドコモをはじめ、端末や通信機器(基地局等)、あるいは計測機器のメーカーなども例年出展している。
MWCを定点観測している業界の人間として、リーマンショック直後に日本勢が一斉に出展を取りやめた時は、「いよいよ黄昏が近いのか」と相応の危機感を覚えたものである。その頃に比べれば、主要国の一角として一定の存在感を回復したといえるだろう。
今回特に注目されたのは、コンテンツ事業者の出展だった。JETROが中心となって進めている「ジャパン・パビリオン」には、NFC(Near Field Communication、近距離無線通信)の台頭で今後の動向が注目されるフェリカ・ネットワークス社をはじめ、コンテンツ、アプリ、ミドルウェアを開発する企業が多く出展した。
また、ケータイ向けコミックの配信や、コンテンツ・アグリゲーション事業を手がけるNTTソルマーレは、例年と同様に日本の「萌え」を前面に打ち出し、ケータイをアウトレットとしたコンテンツ輸出の機会を狙っていたようだ。さらに、ソーシャルゲーム・プラットフォーム事業者の活発な海外展開の一環なのだろう、大手のグリーも目立つ場所にブースを構えていた。