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出口治明の提言:日本の優先順位

首相を変えても政治は変わらない。
いま、何を変えるべきか

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第40回】 2012年3月6日
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政治も経営と同様に、何事かを「決める」仕事である。それにもかかわらず、衆院小選挙区の一票の格差是正をめぐる与野党の選挙制度改革協議は合意に至らず、何の是正処置も講じないまま、衆院選挙区画定審議会(区割り審)設置法に規定された首相への区割り案勧告期限(2月25日)を越えてしまった。平たく言えば、立法府が法を守らず、前代未聞の違法状態に突入してしまったのである。

違法状態で選挙ができるのか

 区割り審設置法は、10年に1度の国勢調査の結果を踏まえて小選挙区の区割りを見直し、一票の格差が2倍以上にならないように改定を行うと定めている。

 昨年2月に公表された2010年国勢調査の結果によると、衆院小選挙区の一票の格差は最大で2.52倍になる。区割り審設置法に従えば、遅くとも今年の2月25日までには新たな区割り案が首相に勧告されていなければならなかった。

 しかも、問題はそれにとどまらない。昨年3月には、最高裁判所が最大格差が2.30倍だった2009年の衆院選について、憲法が定める平等原別に照らして「違憲状態にあった」との最終判断を示し、47都道府県に先ず1議席ずつ与える「1人別枠方式」の廃止を求めたのである。

 これによって、問題のありかが、一票の「格差」にあるのではなく、憲法が定める法の下での平等原別、すなわち、「1人1票を実現する」ことにあるとの認識が急速に広がった(1人1票問題については、以前にも当コラムで論じたことがあるので参照してほしい)。

 このような本質的な問題提起が司法府からなされたにもかかわらず、立法府はこの問題についてはこの一年を無為に過ごし、ついには前例のない違法状態に陥ってしまったのである。「物事を決められない政治」の混迷状態は、ここに極まった感がある。

 仮にこの状態で衆議院が解散されたら、「選挙無効」の司法判断が出ないとは限らない。そもそも、違法状態のまま選挙ができるのだろうか。大いに疑問なしとしない。与野党は、党利党略を離れて、最高裁の問題提起を真剣に受け止め、一刻も早く違法状態の解消に注力してほしい。法を無視したままでは、立法府の名が泣くであろう。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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