盛り上がり続ける「地方創生」ブーム。地方自治体は移住者募集に企業誘致にと日夜PR合戦を繰り広げている。だが、その結果、地方には何が生まれただろうか。「動画は流行ったけど人が来ない」「SNSで拡散されたけど売り上げは上がらない」……これは一般企業でもよく見る光景では? この連載では、地方や企業の事業開発や・ブランディング支援を行っている岡山史興氏が、取材の先々で出会ってきた「予算をかけたのに効果が不透明」な地方創生の世界で、失望のスパイラルを止めるヒントを探るべく、現在の地方創生が抱える課題を分析。「住民がよろこぶ地方創生」の姿に迫る。

地方創生ブームの愚「地方PR動画」乱発はネット時代のハコモノ行政だ<br />写真はイメージです

地方で出会う「東京から来たウェブの人」

「この前、東京からウェブの人が来てくれたんですよ」

 ニコニコしながらそう語るのはある自治体のPR担当職員。ウェブサイトや“バズムービー”など、ネット上で話題になるコンテンツを企画するのが得意ということで有名なウェブ制作会社から売り込みがあり、情報発信の相談をする機会があったのだそうだ。

 業界では名が知られている会社ということもあり、担当者も大きな期待をかけている様子だった。

 一方、また別の自治体との打ち合わせではこんなシーンがあった。

「この前、東京の会社にサイト制作をお願いしたんですけど、ちょっと期待外れで……。確かにいい感じの出来上がりではあるんですけど、移住促進にはつながらなかったというか」

 どうだろう。これらは自治体に限らず、一般企業でも「あるある……」とうなずいてしまうシーンではないだろうか。

 実名は伏せるが、この2つのエピソードに登場した制作会社は同じ会社である。そして、これは各地で聞こえてくる声のほんの一部にすぎない。「ウェブ制作会社」が「コンサルタント」や「広告代理店」、「人気ライター」になったり、「サイト制作」が「ブランディング」や「バズムービー」、「オウンドメディア」と置き換わることもしばしばだ。

 期待に対して、目的が達成されなかったという結果だけが残るこれらの現場。自治体にはトラウマを、東京の企業には不本意な実績を、そして自治体の住民たちには無関心の加速をそれぞれ与えて、また次の地方創生の「現場」が生まれていく。

 なぜこんな悲劇が起きてしまうのか、そしてその悲劇に陥らないためには何が必要なのか。