各地のマンションで大きな問題となっていた“駐車場がら空き問題”。近年、急速に進んだ自動車離れに伴って「マンションに付設する駐車場でも“空き”が発生して、都心・郊外を問わず多くの管理組合を悩ませている」とマンション管理のコンサルティングを行うシーアイピーの須藤桂一社長は言う。大半の管理組合が駐車場の賃貸収入を管理費用や修繕費用に充当しているためだ。
収入不足を埋めようと、多くの管理組合がマンションの住民以外への駐車場の貸し出しを検討するのだが、これまでは“課税問題”が障害となり頓挫していた。マンションの外部へ貸し出すと、組合の収益事業と見なされ、賃貸収入が課税対象となってしまうリスクが懸念されていたからだ。
さらに問題なのは課税の範囲だ。税務当局へ問い合わせても、「全額が課税」「住民分は非課税」といった回答が混在していた。要は所轄の税務署や担当者によって対応がバラバラだったのだ。理不尽に課税されたとしても、管理組合では税務当局との交渉に限界がある。トラブルを嫌う管理会社は組合から相談があっても「課税リスクがあるので外部貸し出しはやらないように」と説明するケースが大半だった。
このため、1台でも外部に貸すと駐車場全体が事業と見なされ、マンション住民が借りている分も課税対象となってしまうというのが半ば“定説”となっていた。
課税実務の曖昧さから起きる駐車場問題を解決するべく、国土交通省は国税庁へ照会を行った。その結果、国税庁は次の三つの例を挙げ、外部貸し出しをした場合の課税対象が明確になった。
(1)募集は住民も外部利用者も区分けなく行い、賃料も同じような場合は収入全額が課税対象。(2)住民に優先権があり、満車時に住民が使用を望んだ場合、外部利用者は一定期間内に解約するような厳しい条件を設けているなら住民の使用分は非課税。(3)工事車両などが1ヵ月程度、臨時で借りる場合は全額が非課税。
つまり住民が優先して駐車場を使えるなら、住民の使用分は非課税であることが明確になったのだ。
もっとも、課税関係はクリアになっても、空き駐車場問題が解消に向かうことは期待できない。
「概算でも法人税や地方税で手取り収入は半分になる。会計や税務申告などを専門家に依頼すれば、それだけで数十万円の費用がかかる。10台以下の貸し出しなら確実に赤字になる」(須藤社長)からだ。
数十台を貸し出すなら大きな黒字も見込めるが、大がかりな事業の管理や募集を誰がやるのか。理事のなり手がないなど通常の運営さえまともにできない管理組合が多いにもかかわらず、収益事業を行えるのか、という疑問も残る。
メンテナンスや改修に数千万円を要する機械式駐車場では、空き駐車場問題はより深刻だ。税務リスクは解消されても、根本的な解決には程遠いのが実情である。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)