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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第21回】 2012年3月12日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

「かけがえのない存在」にならなくてもいい。
「代えのきく」人になろう

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かけがえのない存在にならないと価値がないのか

 いま、かけがえのない存在になる生き方を目指そうという風潮があります。
確かに、家族にとっての自分、恋人や友人にとっての自分など、プライベートの局面ではそうした考えに同意できる部分があります。しかし、仕事とは分けて考える必要があるのではないでしょうか。

 仕事の局面でかけがえのない存在になることは、確かにその時点ではハッピーかもしれません。しかし、長期的に見た場合、かけがえのない存在だけで成り立っている職場は自分にとっても組織にとってもやっかいなことが出てきます。

 たとえば、会社にとって非常に苦しい事業を誰かひとりが3年間かけてどうにか立て直したとします。その過程でほかの人の支援や協力を得られていなければ、引き継ぎたいと思う人も出てこないでしょう。結果的にその事業から離れられなくなり、ほかの部分に発揮されたであろう能力を無駄になってしまいます。仮に誰かが引き継いだとしても、再びうまくいかなくなる可能性も否定できません。

 先ほどプライベートは別と言いましたが、人生は何が起こるかわかりません。自分にとってかけがえのない家族が亡くなった場合、残された家族の悲しみは計り知れません。とはいえ、もう生きていけないということになってしまっては困るのです。

 いま、社会や誰かにとっての「かけがえのない存在」になることこそ、生きる意味や自己実現の賜物と思う人が増えているのではないでしょうか。かけがえのない存在であるかどうかを確認できないといって深く悩む人も多くなっています。

 しかし、かけがえのない存在になるという考え方そのものが「作られた感覚」のように思えてならないのです。社会における自己の確立とかけがえのない存在になることが、同義語のように語られているのではないでしょうか。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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