爆発的に普及を続けるスマートフォン。ソフトバンクモバイルやKDDIのiPhone投入により、携帯電話市場の勢力図が大きく変わりつつある。ここにきて、さらに事態を急転させるニュースが飛び込んできた。それは「ソフトバンクによるプラチナバンド獲得」だ。プラチナバンドとは、700MHzから900MHzの周波数帯域のこと。従来、同社が使用していた2.1GHz帯より電波が遠くまで届きやすく、建物などの障害物をある程度迂回して伝わる性質を持つため、携帯無線通信において最適な周波数帯域と言われている。これまで「電波が弱い」と批判されていたソフトバンクが強力な「武器」を手に入れただけに、NTTドコモやKDDIに対する猛追が加速する可能性が出てきている。群雄割拠の市場に一石を投じるこのニュースは、今後、業界の勢力図をどのように変化させるだろうか。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)
周波数帯域を巡る覇権争いに意外な決着
ソフトバンクが「プラチナバンド」を獲得
ソフトバンクが、通信会社4社との覇権争いを勝ち抜いてプラチナバンドを獲得した。対峙した3社とは、イー・モバイルを提供するイー・アクセス、NTTドコモ、KDDIだ。
プラチナバンドという言葉は、通信における「特に価値の高い帯域」(バンド)という意味に由来し、700MHz~900MHzの周波数帯域を中心とする極超短波の帯域を指す。一度に伝送できる情報量が多く、小型の送受信設備で通信が可能。障害物もある程度迂回して通話できる。携帯無線通信において、最適な周波数帯域と言われている。
現在、アップル製のiPhone 4/iPhone 4SとiPad 2 Wi-Fi+3Gモデルなど、スマートフォンの最新機種がプラチナバンドに対応しており、それらの電波送受信をより効率よく広範囲までカバーできる。
今回、ソフトバンクのプラチナバンド獲得により、同社のスマートフォンがつながりやすくなる。これまでプラチナバンドが割り当てられていたドコモ、KDDIにとって、ソフトバンクの最大の弱点であった「電波」が改善されることは脅威だ。
そもそも、ドコモやKDDIもスマートフォンの普及による通信量の増大を懸念し、プラチナバンド獲得に名乗りを上げていた経緯がある。はじめに、「プラチナバンド獲得」による影響を見ていく前に、ここ数年、携帯市場の勢力図に地殻変動を起こし続けていた「スマートフォン」を巡る状況を改めて確認していこう。