共働き夫婦が、どちらか一方の機会を犠牲にせず、双方の人生とキャリアを充実させるにはどうすべきなのか。筆者が勧めるのは、夫婦共同で「家族としてのキャリア」を臨機応変に組み立てていくことだ。少なくとも、5つの夫婦モデルがあるという。


「私たちは長期的な視野を持つことを学んだのです。その一番の理由は、他に選択肢がなかったからですが」。いま60代で、次世代の起業家らへの投資に忙しいケイトは、こう言った。「フルタイム勤務に固執することも、どちらかが家で子育てに専念することも、私たちにとっては魅力的な選択肢ではありませんでした。単に役割を交替するだけでなく、夫婦のモデルを変えたかったのです」

 ケイトと夫のマシューは、典型的な共働き夫婦だ。2人はビジネススクールで出会い、結婚して、それぞれが企業でハードな仕事に就いた。だがケイトは、会社でトップに上りつめるには、階層が多すぎて時間がかかるとすぐにわかった。マシューの組織のほうが平たく、昇進の道のりはより短い。

 2人は子どもを持つことを決めたとき、話し合い、ともに戦略を練った。有意義な仕事、金銭面の安定、そして素晴らしい家庭――2人が望むこれらを実現するために、両者のキャリアをどのように設計できたのだろうか。

 2人の革新的な取り組みの1つは、人生における「家族としてのキャリア」(ファミリーキャリア)を一緒に計画したことであった。たいていの人は、自分のパートナーとそのキャリアを支えたいと善意から望む。だが、両者のキャリアについて別々に考えた後に、一緒にして成立させようと試みても、往々にして困難だ。

 マシューとケイトは、まず人生設計から始め、それを達成しうるキャリアのあり方を特定して、組み入れたのである。2人は夫婦にとっての、そして始まったばかりの家庭にとっての、1つのビジョンを立てた。それは、職場でのチームのビジョンと同じようなものだ。それぞれの強みは何か。それぞれの夢は何か。共通の大局的なビジョンを必ず実現させるために、互いをどう利用でき、行く手に現れうる危機をどう最小化していけるのか。

 2人は、大いに役立ったのは計画自体ではなかったと気づいた。対話、そして補い合おうとする努力が大事だったのだ。生涯にわたり、どちらか一方ではなく、両者が納得できるものを成すために貢献し合う、という点で合意していたのである。

 2人が30代のときに、ケイトの退職を決める。彼女は2人の幼い子どもの世話をするために、時間の柔軟性を一時的に優先した。マシューは、この時期の金銭的な必要性から、会社勤めを続けることにした。ケイトは、きわめて有望と判断した事業を立ち上げて、試験的に運営してみようと考えた。それが軌道に乗ったら、その後マシューも加わって規模を拡大してから、事業を売却すればよい。そうすれば、新たな人生を始めることができる。

 そして、事業は軌道に乗った。