オーナーの会社私物化と
サラリーマン社長の不正、どっちが悪いか

──事件発生後、オーナー社長への風当たりの強さは感じましたか。

 それは日本特有の嫉妬でしょう。

「あの人は苦労人だから性格が良い」と言われる人もいれば、「苦労しているから性格が悪い人」もいる。育ちのいいお嬢様だから使用人に優しく接する人もいれば、その逆もあります。結局、オーナーの性格次第なのです。

 トップに居座って業績低迷を招いているサラリーマン社長だって少なくない。オーナーが会社を私物化するのと、株を持っていない人が私物化するのとではどっちが悪いのでしょう。

──確かに、東芝、日産など、サラリーマン社長の会社でも不正は起こっていますね。

 そうですし、株主を無視したことをしているサラリーマン社長が多い。

 そもそも、オーナー企業から始まっていない会社はどれくらいあるのでしょうか。オーナーが悪いというなら起業は無理です。

 共産主義じゃないので自分の子や親戚に株式を譲るのは悪いことではありません。二代目、三代目で私みたいなのが悪いことをしてしまったら批判されて当然ですが、オーナー企業そのものが悪いというのは日本社会の悪い癖だと思います。

──三代目の井川さんは子供のころから家業を継ぐことを意識されていたそうですね。就職してから、オーナー企業の強みをいかすためにどんなことを心掛けましたか。

 自分にもプライドがあったので他の社員連中には仕事では負けないぞという気持ちでした。誰よりいい知恵を出して誰より成果を出そうと思っていたし、実際にそうだったつもりです。

 オーナー企業の強みにリーダーシップを発揮しやすいというのがありますが、一例としてティッシュやオムツといった家庭紙部門トップ時代に行った改革があります。

 部門トップに就いた当時、家庭紙は売上高500億円で100億円近い赤字があった。これを立て直そうと一所懸命やりました。失敗したら業界から「やっぱりボンボンだったな」と言われてしまいますしね。

 しかし、就任後、百何十億の赤字を出してしまった。当時は本社の廊下の端っこを歩いていました。でも、3年目でやっと分かってきたんです。

 当時、大王製紙は良いものを安く大量に作ればいいという発想でした。それが製紙業界の体質だったし、大王製紙の中興の祖と呼ばれた父の高雄ですらそうだった。