──オーナー社長としての幅を広げるためにどんなことをしていましたか。オーナー社長同士の付き合いも多かったようですが。

 父に連れられて大学生のころから銀座で飲んでいました。名だたるオーナー社長に可愛がってもらいましたよ。まさに銀座は夜の社交界でした。

 価値観や話題が合うので、やはり創業家出身の社長に親近感を持ちます。正直、相手がサラリーマン社長なら「ああサラリーマンか」と思っていました。オーナーと同じような遊び方もできませんしね。上場会社の社長より、むしろ地方のオーナー社長の方が使える額が多いようです。

オーナー社長が陥りやすい罠
人事に偏りが出る傾向も

──オーナー社長が陥りやすい罠とは何でしょうか。

Photo by K.S.

 まずは、私のように会社を私物化してしまうことですね。

 それと人事に偏りが出る傾向がある。父を見ていて反面教師にしていたのは、そこまで悪くないと私からは見える人でも、すぱっと切ってしまうことです。

 こいつはできると思って引き上げるのですが、少しでも駄目なところがあったら左遷してしまう。

 例えば本社の財務部長をいきなりゴルフ場の支配人にしたことがありました。それなら最初から登用するなよと。社員にも家族があるんですから。

 父は好き嫌いで人事はしませんでしたが、ちょっとしたことで上げたり、落としたりとエレベータみたいな人事をしていました。

──井川家とそれ以外の間の不公平感はどうでしたか。

 それはないです。最終的に大王製紙本体に残っていたのは父と叔父、私、弟の4人だけでしたから。

 逆に言うと、4人だけだったから、佐光氏に足元をすくわれてしまった。父は絶対権力者でしたが、役員会を掌握しなければ力を発揮できないことを分かっていませんでした。父が会長を退任した後も影響力を持てたのは私と弟が役員だったからです。