──非創業家の経営者との対立も、オーナーが直面しやすいリスクです。

 佐光氏の判断次第では、そもそも私の借金は事件にならずに済んでいたことを指摘しておきます。

 私の借金は有価証券報告書にも記載されていて、決して隠していたわけではありません。契約では2011年9月末に返すことになっていた。

 ただ、返済のための現金がなかったので関係会社の株式で代物弁済しようとしていました。債権者である関係会社7社の取締役会で、それを認める決議をする予定だったのです。

 ところが、7社は「現金で返してくれ」と言って代物弁済を拒否した。それは、本社の指示に基づくものだったと関係会社の一部幹部が裁判で証言しています。

 本社を仕切っていた佐光氏は、(井川家が保有する)大王製紙関連の株式をのどから手が出るほど欲しかったはずです。最終的に440億円で全部引き取ったわけですから。

 佐光氏が代物弁済を認めていれば、借金を返せていた。返済されていれば事件にする必要はないと、東京地検特捜部の検事も言っていました。

──時が経つにつれて大王製紙に関係する親族が増えたことも問題でしたか。

 だと思いますね。父の兄弟は、自分が経営する関連会社と大王製紙の役員を兼ねていて、今なら利益相反で問題になるような状況でした。

 大王製紙の副社長をやりながら、大王製紙の営業部長を呼び付けて、自分が経営する関連会社の代理店にもっと安く卸せと言っているんだからひどい話です。

 父がおじたちを大王製紙本体から追い出したのは大王製紙だけの利益を考えて経営する体制をつくるためでした。おじたちとは、それで仲が悪くなってしまったわけですが。

「大王」という名は
「王子」を超えるという意志

──カジノ問題で大王製紙株式が売却されることになったのは業界再編のきっかけに成り得ましたが、結果的には各社とも展望を描きにくい状況のまま停滞しているようです。

 正直、私と弟は事件が起きる前から大王製紙からいつエグジットするかを考えていました。

 先を見通したらそうなりますよ。斜陽産業で国際競争力もなくなり、しかも当時業界3位の会社です。素材産業で生き残るのは業界2位まででしょう。エグジットしたほうが、社員も株主もハッピーだろうと考えていました。

 実は、私の借金返済に当たって、国内最大手の王子製紙に井川家の大王製紙関連株を譲渡して、合併してもいいと思っていました。