尖閣諸島など南西諸島の防衛を考える際の要点は一にも二にも制空権で、それに制海権も付随する。

 だが航空自衛隊が東シナ海で優勢を確保できる公算は低い。中国軍にとっては、北方でのソ連の脅威が去った今日、東シナ海は台湾との軍事衝突を想定した場合の最重要の「台湾正面」であり、その正面を担当する東部戦区には新鋭機が優先的に配備されている。

 東部戦区の中国空軍は10個戦闘機部隊(旅団あるいは連隊)で戦闘機約240機を持つと推定される。

 うち旧式の戦闘機である「J7」と「J8」で構成されるのは3個隊だけで、他の7個隊(約170機)はロシア製の「Su30」や国産の「J10」など、米国のF15、F16に一応、匹敵する「第4世代戦闘機」を持つと考えられる。また海軍東海艦隊の航空隊は新鋭戦闘機2個連隊(40機余)を持つと見られる。

 これに対する台湾空軍は戦闘機400機余を持ち、うち「第4世代戦闘機」は190機だ。

 当面の航空戦力はほぼ拮抗か、台湾優位と思えるが、中国は全土に戦闘機1300機余、うち第4世代戦闘機710機余を持つから、有事の際には他地域の部隊も台湾正面に移動展開が可能だ。

 一方で、航空自衛隊は那覇にF15戦闘機約40機を配備しているほか、福岡県築城にF2戦闘機約40機、宮崎県新田原にF15約20機がいる。このうち40機を防空に残せば、尖閣上空には20機を出動させることができる。

 だが九州の基地から尖閣諸島へは約1000kmだから行動半径ぎりぎりで、上空で待機、哨戒するには空中給油が必要だ。中国沿岸からは約400kmだから、中国空軍にとってはるかに有利な場所だ。

 中国空軍のパイロットの年間飛行訓練は、かつては70~80時間程で、練度は低かった。だが一時は4500機もあった戦闘機は、単価の高騰のため1300機程に減り、財政全体にも余裕が生まれて、今日では訓練飛行は年間約150時間とされ、日本と同等だ。

 日本側が尖閣上空に出せる戦闘機は那覇の40機と九州から20機の計60機、中国は海軍航空隊を含め、200機程の第4世代戦闘機を出せるから、数的には日本は3対1の劣勢となる。

 大型レーダーを積み、敵機を遠距離で発見する「空中早期警戒機」の性能の差や、電波妨害などの「電子戦」能力では日本が当面優位と思われるが、それで3対1の劣勢を補えるかどうかは大いに疑問だ。