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どう中国と付き合うか 反日暴動から1年、平和友好条約締結から35年

「領土を守る」とき、何が起こるのか
西部方面普通科連隊元隊員の証言

江口晋太朗 [編集者・ジャーナリスト、元自衛官]
【第9回】 2013年10月30日
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人ごとのように話される
尖閣諸島の防衛

えぐち・しんたろう
1984年8月生まれ。福岡県出身。編集者、ジャーナリスト、コンテンツディレクター。高校卒業後、2003年に西部方面普通科連隊に入隊。06年に除隊し、大学に入学。その後、編集者、ジャーナリストとして活動。執筆活動や、情報設計や情報環境デザインをもとにしたコンテンツ企画制作やプロデュース等を手がける。コミュニケーションデザインや場作り、ファシリテーションをもとに、情報・環境・アート・デザイン・テクノロジーなど、ジャンルを超えた様々な分野を横断しながら活動。著書に『パブリックシフトネット選挙から始まる「私たち」の政治』『社会をパブリックシフトするために 2013参院選 ネット選挙の課題と未来』など。Twitter:@eshintaro

 私は2003年から2006年春までの約3年弱、陸上自衛隊西部方面普通科連隊(以下、西普連)の隊員として勤務していた。2002年に新設された部隊で、長崎県佐世保市の九十九島を一望する海岸線近くの相浦駐屯地を拠点としていた。新設時には約600名で編成された。

 西普連は九州・沖縄地域全体を統括する西部方面総監直轄の指揮下にある特殊任務の部隊である。特殊任務とはつまり、事が起きた際には、方面総監の判断により、第一陣として派遣される即応部隊としての任務だ。即応部隊はいつ何が起きても出動できるように、日々準備と訓練を行なう、徹底した現場主義な部隊だ。

 西普連に課せられた使命は、離島防衛対処部隊としての任務遂行である。部隊設立の大きなきっかけは、1999年に発生した不審船による能登半島沖への領海侵犯事件である。武装した不審船が海上自衛隊や海上保安庁の警備隊や護衛艦と威嚇射撃を交えるといった、海上自衛隊発足以来初の海上警備行動が行なわれた出来事でもある。この事件は、自衛隊における武器使用案件としても大きな注目を浴び、その様子はテレビのニュースでも放映され、記憶にある読者の方も多いのではないだろうか。

 危機感を覚えた日本政府が、南西海域全体の警備体制を整えるなかで、西普連が誕生した。尖閣諸島も含めた対馬から与那国島までの南北1200キロ、東西900キロにもおよぶ、九州・沖縄の周囲にある有人無人を含めた2500以上もの島の防衛を担う。

 部隊設立時には、明確に北朝鮮や韓国、中国などの隣国の存在を挙げることはなかったが、主に3国による不法な日本の領土・領海の侵犯が想定されていたことは間違いない。

 そうした経験がある私は、現在の尖閣諸島をめぐる日中間の対立を見ていると、言葉では言い表せない、複雑な気持ちになる。時に、安直に自衛隊や海上保安庁を出動させようとする声も一部ある。

 もちろん、有事には行動することもやむを得ないかもしれない。しかし、自衛隊、とりわけ私が在籍した西普連が出動するようなことになったら、何が起こるのか、離島防衛の最前線で、誰が、どのようなことをするのか、多くの日本の国民は想像すらしていないだろう。

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江口晋太朗 [編集者・ジャーナリスト、元自衛官]

えぐち・しんたろう/1984年8月生まれ。福岡県出身。編集者、ジャーナリスト、コンテンツディレクター。高校卒業後、2003年に西部方面普通科連隊に入隊。06年に除隊し、大学に入学。その後、編集者、ジャーナリストとして活動。執筆活動や、情報設計や情報環境デザインをもとにしたコンテンツ企画制作やプロデュース等を手がける。コミュニケーションデザインや場作り、ファシリテーションをもとに、情報・環境・アート・デザイン・テクノロジーなど、ジャンルを超えた様々な分野を横断しながら活動。著書に『パブリックシフトネット選挙から始まる「私たち」の政治』『社会をパブリックシフトするために 2013参院選 ネット選挙の課題と未来』など。
Twitter:@eshintaro

 


どう中国と付き合うか 反日暴動から1年、平和友好条約締結から35年

昨年来、日中関係はかつてないほど悪化している。どう中国と付き合うか。これは私たち日本人にとって、非常に重要な政治的、経済的課題だ。世界第2位の経済大国となり、地政学的にも隣国である中国と、付き合わないということは不可能だし、その選択は現実的ではない。しかし、今の両国関係を冷静に見れば見るほど、関係を改善する事は困難に思えてしまう。いかに友好的な関係を築き、両国の国益を最大化していくか。その答えを探るために、ダイヤモンド・オンラインでは、昨年の中国交正常化40年に続き、反日暴動から1年、日中平和友好条約締結35年の今、日中の歴史、外交、防衛などの専門家にインタビューと寄稿をお願いした。

「どう中国と付き合うか 反日暴動から1年、平和友好条約締結から35年」

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