どちらに転んでも
「尖閣防衛」には役立たない

 もし制空権と、それに伴う制海権を十分に確保できないまま水陸機動団による島の奪回作戦が発動されれば、輸送艦は中国の空対艦ミサイルの標的となり、「オスプレイ」やヘリコプターは簡単に撃墜される危険が大きい。

 仮に上陸、制圧に成功しても、補給が続かなければ、第2次世界大戦時と同様、兵は餓死の渕に立たされる。

 制空権、制海権が確保されるまで「水陸機動団」を出動させなければよいが、島を占拠されたとなれば、「水陸機動団は何をしているのか」との批判が出て、政治家やメディアもそれに乗る可能性がある。こうした声に押されて水陸機動団が危険を冒して出勤し、海上で全滅の事態も起こりかねない。

 真珠湾攻撃の前、陸軍は「海軍の方から対米戦争に勝ち目はない、と言ってもらえまいか」と内閣書記官長(今の官房長官)を通じて事前に働きかけた。だが、海軍は「長年、対米戦準備のためとして予算をいただいて来たのに、今さらそんなことは言えません」と断り、日本は勝算のない戦争に突入した。

 こうしたことは日本だけではない。どの国の軍も巨大な官僚機構で、組織の防衛と面目の維持を第一としがちだから、そのために部隊を犠牲にすることが起こる。

 その最も顕著な例は、第1次世界大戦末期のドイツ海軍だ。

 敗色濃い中、巨費を投じた「大海艦隊」は出動すれば英海軍に撃滅されるのは必定だったから、港内に引きこもっていた。

 だが、海軍首脳部はあえて出動を命じ最期を飾ろうとした。無駄死にをさせる出動命令に水兵たちは反乱を起こし、これが全国に波及して革命となり、ドイツ皇帝はオランダに亡命した。

 制空、制海権が十分に確保されない場合、「水陸機動団」が出動しなくても、メディアや政治家はそれを「臆病」と非難しないよう、気を付けねばならない。

 一方、制空、制海権が確立していれば、まず相手は攻めて来ないし、仮に上陸しても、補給が切れて立ち枯れになるのを待てばよい。この場合にも「水陸機動団」の出動を急がせるのは、無駄に死傷者を出すだけで愚策だ。

 どちらに転んでも「水陸両用団」の創設は無駄と考える。