投資減らし無借金経営
「アニマルスピリット」失った経営者

 なぜ、このような事態に陥ったのだろうか。

 バブル崩壊までの日本企業は、家計の預金を銀行経由で借り入れ、自己資金(キャッシュフロー)を上回る投資を行うことで得た収入を、賃金や利子の形で家計に還元し経済の好循環をリードしてきた。

 しかし、バブルが崩壊して以降は非正規雇用を拡大し、正社員の賃金を抑制して人件費を削ると共に、キャッシュフロー以下に投資を減らして借金返済に奔走するようになった。

 一方で利潤を目的としない公的サービスの供給を担う政府が借金をして、事業を拡大し同時に財政赤字を累増させている。

 その結果、日本の企業部門は1998年以降フローベースで資金不足から貯蓄超過に転じ、日本政策投資銀行の中村純一氏(『無借金企業の謎』)によれば実質無借金(有利子負債を上回る現預金を保有)を含めると、日本の上場企業主要5業種(製造業、建設業、不動産業、商業、サービス業)の40%強がいまや「無借金経営」だという。

 経済学史家のハイルブローナーは無借金を誇るような経営者を「現代の地主」にすぎないと喝破する。

 ケインズの言う「血気(アニマルスピリット)」をもって不確実な投資に挑むわけでも、またシュンペーターの言う「企業家精神(アントレプレナーシップ)」を発揮して技術革新にチャレンジするわけでもなく、ひたすら人件費を削減して利益を上げ、内部留保の蓄積に血道を上げるような経営者など、経営者としては失格なのだ。

 企業が借金を減らしたことで銀行は預金の運用に苦しみ、やむを得ず低い利回りしか期待できない公債を購入するようになった。

 実際、銀行の総資金利回りは全国銀行ベースで2016年度決算では0.91%にまで低下し、人件費などの経費率0.84%を差し引くと、利鞘はわずか0.07%にすぎず、預金に利子を付けるのはほとんど難しい状況に陥っている。

 借入金利を上回る利益率を期待して設備投資を行っていたかつての企業と異なり、最初から利益を目的としない政府に家計の預金が回れば金利ゼロになるのは当然である。