その一方で、企業は積み上げた内部留保を海外への投融資に回して高い利益を上げており、その利益は株式の配当や株価の上昇あるいは高額な経営者報酬という形で富裕層に還元されている。

苦しんでいるのは「普通の人びと」
家計の利子所得は激減

 一方で「普通の人びと」はどうか。

 ほとんどの個人や家計は、雇用や生活の不安がある中では、長期的には収益が期待できても、価格が変動する株式や投資信託などのリスク資産を避け、元本が保証された金利ゼロの預貯金で資産を運用している。

 実際、リスク資産を保有する家計の割合は、日本銀行の調査(『日米家計のリスク資産保有に関する論点整理』)によれば日本で1割程度、アメリカでも15%程度にすぎない。

 それでも、デフレが続く間は、金利ゼロでも預貯金の価値は減価せず、零細な資産保有者の利益も守られるから、人々は預貯金から離れようとはしなかったのだ。

 この結果、家計が得る利子所得は、『国民経済計算』によれば1991年度の37.5兆円をピークに2016年度では6.1兆円に減少している。

 同期間に家計が保有する現預金が511兆円から938兆円に増加していることを考えれば、家計の預金利回りはバブル崩壊後の長期停滞の中で7.3%から0.65%へと10分の1以下に減った計算になる。

 企業が生みだす付加価値、つまり売り上げから原材料などの中間投入費を差し引いた価値の中には、人件費や営業利益と並んで借入に対する支払い利息も含まれている。

 お金を借りて投資を行い、利益を挙げて利息を払うことは付加価値の創造でもあるからだ。

 この支払い利息の推移を『法人企業統計』で見ると、91年度の34.6兆円から2016年度には6.2兆円に減少している。これが普通の家計が得る利子所得減少の主因である。

 借金を減らして無借金を目指す企業経営によって失われた家計の利子所得は、ピーク時との差額として試算すると92年度から2016年度までの累計で650兆円近くに及ぶ。