不況や競合に負けないためには在庫が宝になる

 そんな成り行き任せの経営でも、着々と規模は大きくなっていき、東京や大阪のスーパーまで出向くようになり、それに合わせて全国各地に営業所を構え、倉庫と移動店舗のトラックの数を増やしていった。そのうちスーパー内に常設店の誘いも来るようになり、徐々に移動販売から常設店舗型に切り替わっていく。1991年には香川県高松市に最初の直営店を出し、そこからチェーン展開が始まるのである。内心、店を増やすのは怖くて仕方なかったが、月に50~60の出店を続け、売上高は急速に伸びていった。

 常設の直営店を始めた91年が今の100円ショップダイソーのひとつの転機と考えると、その後の軌跡とぴったり重なるのがバブル崩壊と長いデフレ不況だ。

 しかし、ダイソーは決してデフレを追い風に、安さだけを売り物にしてきたわけではない。不況だからこそ、安さの中にある価値が見直された面はあるが、高い商品原価で利益を出しにくい商売なので、デフレというのは必ずしも恵まれた環境とはいえなかった。

 そもそも恵まれた商売であれば、大手資本を含め、もっと参入者がでてきただろう。この間、「セリア」(1985年創業)、「キャンドゥ」(1993年創業)といった競合も登場し、業績を伸ばしてきたが、追いつかれることはなかった。2000年には大手スーパーのダイエーが、全国の店舗で「88円コーナー」を展開し始めたこともあった。あのときは「まずい」とさすがに構えたが、ダイエーは4年で88円ショップから撤退した。

 なぜ大手が入ってきても負けなかったかというと、大手が決してやらないことを、われわれはやったからだ。大手は在庫というものを嫌う。しかし、売る自信さえあれば在庫は宝の山だ。そこで例えば、1つの商品を開発し、仕入れる際には必ず100万個という単位にした。そこまでの規模だと作れるメーカーも限られ、他社の発注を受けることはできない。いい商品をそれだけ大量に確保するということが、そのまま強みになる。

 現在ダイソーは、国内には3150店舗、2001年から海外展開を始め、国外には26ヵ国に1900店ある。店舗の拡大とともに、取り扱う商品の規模が大きくなっていった。小売りの巨人・ダイエーといえども、この規模には追いつけなかったというわけだ。ずっと「ダイソーは不良在庫を抱えてつぶれる」と噂されてきたが、今でも私は在庫こそが宝だと信じている。