日本の山林の荒廃が深刻だ。スギやヒノキの人工林を抱える山の無価値化が進行しているのだ。地方経済の浮沈にも影響する山林経済、その出口を中国に求める動きが水面下で進んでいる。

 筆者は今年2月、愛媛県宇和島市のある漁港を訪れた。中国では今どんなものが消費されているのか、どんなビジネスが伸びているのか、そんな直近の情報を“産地直送”で講演させてもらうためだ。

「昨今、中国では木材の消費が伸びている」――そんな話をすると会場の空気がにわかに張り詰めた。

 中国では今、林業経済が伸びている。2011年1~5月の中国における人造板(wood based panel)の生産は7700万m3で前年同期比35%増、家具生産については8200万件で前年同期比8.3%増、フロア材については3900万m2で前年同期比7.3%増となった。同期の林業総生産高は8000億元で、前年同期に比べ8.5%の成長となった。

 中国では2000年以降の住宅購入ブームで建材や家具などを中心に木材消費が急増する一方で、伐採などを原因に木材や木工製品の供給が不足しているのだ。国家も投資家も林業を次なる経済の牽引役と睨み、国家は政策でこの市場を牽引しようとし、また投資家は林業という新たな領域に食指を動かしている。

利用が進まない日本のスギ・ヒノキ
森林荒廃を招き花粉症の元凶にも

 他方、愛媛県への訪問で知ったのは、木材が売れずに困っている現状だった。

「愛媛県はヒノキとスギの一大産地だが、手入れもされることなく伸び放題。スギの木を今後どうするかは、頭の痛い問題なのです」と地元の町長は話す。

 これらスギの木は、戦後に造成された人工林である。住宅ブームを見込んだ建材需要を満たすために造林が行われ、今では日本の森林面積2500万haのうち1000万haを人工林が占めるようになった。