グーグル、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ね、「AI以後」「人生100年時代」の働き方を先駆けて実践する尾原和啓氏が、その圧倒的な経験の全てを込めた新刊、『どこでも誰とでも働ける』。4月19日より発売となる同書の一部を先行公開します。

 『どこでも誰とでも働ける』を書くにあたり、ぼくがいまのように、「どこでも誰とでも」働けている理由を、昔のことを思い出しながら考えてみました。

 最初のベースになったのは、しっかりとした仕事術のようなものではなくて、できる限り人に貢献したいという気持ちであるとか、ギブ(Give)の習慣とかであったように思います。

 特別な会社でないと学べないことではありません。誰にでもできることの積み重ねから始まったのです。それは、インターネット化が進み、AIなどの技術革新が起きたあとだからこそ活きてくる、楽しくて冴えたやり方だと思っています。だから、本書もそうした話から始めます。

 そのうえで、マッキンゼー、リクルート、グーグルといった職場で、たくさんの人に教わりながらつくってきた仕事のルールを、改めて言葉にしてみました。これらは、プロになるための、またプロでい続けるための、ぼくなりの方法論です。難しいもの、複雑なものは1つもないので、ぜひ試してみてください。

自分からギブすることが
インターネット時代の大前提

 個人と会社、あるいは個人同士、会社同士が「フラット(対等)」な関係で「リンク(つながり)」し、知識や成果を「シェア(共有)」するインターネット化した社会では、会社から一方的に命令される関係と違って、みなさんはもっと生き生きと働くことができます。

 でも、他の人から必要な情報をシェアしてもらうには、まず自分からシェアする姿勢が欠かせません。先に相手にギブするから、見返りをもらえる(テイク)のであって、何でも「くれくれ」とねだってばかりの人や、何かしてもらったのに何も返さない人に対しては、誰も自分の知識や成果をシェアしようとは思わないでしょう。

 ぼくは、「ギブ&テイク」ではなく、さらに一歩進めて、「ギブギブギブギブギブ&ギブ」でちょうどいいと思っています。見返りを求めることなく、自分のもっているスキルを惜しげもなく提供することで、新しい経験を仕入れることができるからです。

 新しく仕入れた経験からさらに別の価値を提供して、次の経験につなげていく。ギブし続ければ、どんどん自分のスキルや経験値が上がります。自分からギブすることは、いつの時代も最強の戦略であり続けるでしょう。

 ぼくがそれを実感したのは、1995年の阪神・淡路大震災、大学院1年生のときでした。大阪の実家の被害はそれほど大きくなく、大学院のあった京都も文化財がいくつか倒れたくらいでほとんど影響がなかったこともあり、ぼくは震災の2日目から現場に飛びこみました。

 ただ現場はどこも混乱していて、ボランティアが大勢やってきて、救援物資も全国から続々と届いているのに、ある避難所には人も物資も集中する一方、別の避難所では人が足りないということが起きていました。そこでボランティアの人たちを振り分けるための「東灘区情報センター」を神戸大学の学生と協力して立ち上げました。結果として、そこに各避難所の情報が集まり、被災者とボランティアをつなぐプラットフォームになったという話は『ITビジネスの原理』(NHK出版)という本にも書きました。

 最初は「誰だ?こいつは?」と不審の目で見られても、混乱する現場で私心なく大義のために動き続けていれば、やがて周囲から信頼されて、年齢や肩書、所属の違う人たちとチームを組めることがわかりました。そのときの経験があるから、どんな会社に転職しても、どんなプロジェクトに参加しても、すぐに溶けこめるのです。

 もしあなたが新しい職場に馴染みにくいと感じるとしたら、それは自分で勝手に「壁」をつくっているだけではないでしょうか。その「壁」を壊すのは簡単です。ひたすら相手のためになることをギブし続けること。これさえできれば、本当に「どこでも誰とでも」働けます。

 震災が起きたのは、まだウィンドウズ95が登場する前のことだったので、パソコンが得意だったぼくは、それだけで希少価値がありました。そこで、あちこちの会議に顔を出しては、リアルタイムで議事録をとるというスキルを提供していました。

 ぼくを会議のメンバーに入れておくと、会議が終わった瞬間に議事録とTO DOリストができあがっているから、それをプリントアウトして全員に配るだけでいい、ということが知れ渡ると、「尾原がいると便利だから、ちょっと来い」と、いろいろな会議に呼んでもらえるようになりました(この議事録の書き方は、『どこでも誰とでも働ける』でくわしく解説しています)。

 ぼくが最初にもっていた武器は、この「他人よりも議事録をとるのが速い」ということだけでしたが、それがきっかけでいろいろな会議に呼ばれるようになり、やがてそこで仕入れた知識をシェアして、「◯◯さんに会いに行けば、この問題はすぐに解決しますよ」とあちこちをつなげる(リンク)ようになります。そうしているうちに、さらに「次の実行プロジェクトをやってみるか」と声をかけてもらって、プロジェクトを動かす経験もできました。

 最初は小さなものからスタートして、どんどんギブしていくだけで成長が加速するのは、まさに「わらしべ長者」の世界です。

 ビジネスにおいても、トラブルの最前線はさまざまな問題が凝縮しているので、貴重な経験を積むことができます。現場が混乱しているときほど、肩書や地位に関係なく、どんどん実行した人が勝ちですから、ぼくは喜んで首を突っこみます。そこでスキルをギブすれば、もっと大きなものが得られることがわかっているからです。

 自分を成長させるギブの「わらしべ長者」は、直接的な見返り(金銭)を求めないことがうまくいくコツです。直接的な見返りがなくても、もっと大きな見返り(経験、スキル、人望、ブランド)を手に入れることができるのです。