「給与内枠選択制」の問題点は
厚生年金など広範囲に影響が出ること

(1)厚生年金に影響が出る

 この制度の採用を、金融機関やコンサルタントなどから勧められた事業主の多くは、「社会保険料が減るので、会社としてのコスト削減になる」と言われて、飛びついているケースが多いようだ。

 確定拠出年金の掛金は給与と見なされないので、もし従業員が一定の金額を掛金とした場合、その金額は給与から減る。だから、社会保険料の半分を負担する企業にとって、確かに負担は減るだろう。しかしながらこの場合、4~6月の残業代同様、従業員の将来の厚生年金受取額が減少するという事実を忘れてはいけない。

(2)従業員がそのことを理解していない

 仮に、従業員が将来の年金が減ることをきちんと理解した上で選択したのであればまだしも、採用している企業に勤める従業員の人たちに話を聞いても「それは知らなかった」という声が非常に多い。

 実際、確定拠出年金制度で、いの一番に加入対象者に伝えなければならないことは「60歳までは引き出せない」ということだ。ところが、この事実を知っている加入者は、全体の半分程度しかいないというデータがある(NPO法人 確定拠出年金総合研究所 企業型確定拠出年金制度加入者調査)。

 すなわち、多くの加入者は加入の時に聞いても忘れているか、理解していないのである。これほどシンプルで、重要な事実すら理解していない加入者が多いのに、「給与内枠選択制」を選んだ場合、将来もらえる公的年金の額が減るということをどれぐらい正確にきちんと伝えているのか、はなはだ疑問だ。