適切な人材を配置すると
FM部門は企業成長の秘密兵器になる

 FMでは、「PDCA(Plan・Do・Check・Action)」を回し、スパイラルアップすることも重要だ。特にオフィス移転の場合には、経営戦略に連動して、上の3点を検証することが重要なポイントとなる。

「ただし、ビジネスの加速化が進む最近、海外の先進企業では、経営自体、『PDCA』から『DCAP(Do・Check・Action・Plan)』や『DDDD(Do・Do・Do・Do)といった方向に切り替わりつつあります。FMは移転日=スタート日と考えてPDCAを回すのが大事ですが、経営の短期的な変更にも十分に対応できる柔軟性に富んだFM戦略が求められるようになるかもしれません」

 日本では、FMを総務部門に任せるケースが多い。だが、企業経営では人件費に次ぐ大きなコストがかかるファシリティの運営は、多忙な総務業務の片手間に担える仕事ではない、と古阪さんは説明する。

「欧米ではほとんどの企業で、FM部門はCFO(最高財務責任者)の直轄にあり、FM部門のトップは、経営者やCFOに話を直接することが求められます。FMに本腰を入れて取り組むのであれば、経営企画や人事、財務、ITなどの部門と連携する部署を設ける必要があります」

 この部門のメンバーには、不動産や建物、設備などファシリティ関連の分野はもちろん、CRE(企業不動産)にかかわる財務分析、最新のITや人事評価制度などにも知識がある人が望ましい、と古阪さんは言う。

「人が好きで、従業員の本音を聞き出すコミュニケーション力と社内ネットワークをもち、競合他社の取り組みを聞きつける情報収集力があると、文句なしでしょう」

 経営者の多くは、IT投資には熱心でも、従業員が心地よく働くためのオフィスづくりには投資どころか、コスト削減の対象と見る傾向にある。しかし、IoTやAIの導入で各部署の雑用も軽減されるときこそが、FM部門を育てるいい好機となるはずなのだ。

「オフィスをうまく計画・運営することは、企業の成長と進化のカギを握っているといえます。まずは、従業員の生産性や創造性を向上させることができるFMは、経営戦略を実現するための“投資”、と経営者に意識を変えてもらうことが必要ですね」