ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
明るい未来のつくりかた
【第1回】 2012年3月30日
著者・コラム紹介バックナンバー
市川文子 [株式会社博報堂イノベーションラボ 研究員]

いまアイスランドに学ぶべき理由は何か?

1
nextpage

世界金融危機から3年――アイスランドの人々は、国の実質的財政破綻で社会の「断絶」を経験した。彼らはいま何を思い、未来といかに対峙しているのか。現地へ飛び、シングルマザーから起業家まで、様々な人々と出会い対話した中には、震災という「断絶」に立ち向かう日本への示唆が含まれていた。

 成田空港からのフライト所要時間15時間。アジア、ロシア、北欧を飛び越え、北大西洋の上空を2時間半ほど行ったところに、アイスランドはある。

 アイスランドは、地図上ではそれなりの存在感がある。だが実際は、最北にあるがために伸びて見えるだけだ。その面積は、およそ10万平方キロメートル。北海道と四国を合わせたほどの大きさしかない。人口も32万人と、東京・中野区ほどの小さな国である。

教会から見下ろした街の中心部

 ケフラヴィーク空港に着いてまず目を奪われるのは、その美しさだ。深く青い海と、苔の生した果てしなくなだらかな大地。そして東へ足を伸ばせば、多くの観光客を魅了してやまないゲイシール(間欠泉)や、夏も溶けることのない雄大な氷河が待っている。

 2012年1月。私は、縁もゆかりもないこの土地に降り立った。

 残念ながらその目的は、観光ではなく仕事である。

多様な人々を理解するための
エスノグラフィーというアプローチ

 エスノグラフィーという言葉をご存知だろうか。

 日本語では「民族誌」と訳されることが多い。もともとは文化人類学に始まった、多様な地域や文化背景を持つ人々を理解する手法である。

 しかし今日では、新製品開発や経営戦略策定など、ビジネスの場で応用されている。IT分野でイノベーションを次々と生み出してきた米国パロアルト研究所(ゼロックスが1970年に開設。通称PARC)が、初めて文化人類学者を登用し、ユーザーについて理解を深めようと歩み始めてから、既に30年以上が経過している。

 文化人類学を専攻していない自分が言うのは口幅ったいが、産業界において私は「エスノグラフィック・リサーチャー」と呼ばれる。人はそれぞれプロとして、象徴的な場所に身を置くことに憧れを持つが、残念ながら私の仕事にそうしたシンボリックな場所は存在しない。リサーチャーなのに、白衣やビーカー、たくさんのボタンがついた実験機具もなければ、書籍や論文の溢れ帰った書棚に囲まれた研究室もない。この仕事の中核を成す場所があるとすれば、それはあくまでも生活者、人々が日常を送るフィールド(現場)である。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
再起動 リブート

再起動 リブート

斉藤徹 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2016年12月

<内容紹介>
僕は4回死に、そのたびに復活した。 波瀾万丈のベンチャー経営を描き尽くした真実の物語。 バブルに踊ろされ、金融危機に翻弄され、資金繰り地獄を生き抜き、会社分割、事業譲渡、企業買収、追放、度重なる裁判、差し押さえ、自宅競売の危機を乗り越え、たどりついた境地とは

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、1/8~1/14)


注目のトピックスPR


市川文子[株式会社博報堂イノベーションラボ 研究員]

株式会社博報堂イノベーションラボ研究員。慶應義塾大学政策・メディア研究科修了。卒業とともにノキア・フィンランドに入社。以来9年間、ユーザエクスペリエンスのエキスパートとして世界各国で フィールドワークの実施とディレクションを行い、製品・サービスの企画開発に携わる。2008年にノキアを退社。以降、フリーのコンサルタントとして国内外の企業の商品ならびに戦略開発を行ってきた。2010年より博報堂イノベーションラボに参加。一児の母。


明るい未来のつくりかた

アイスランドは、金融危機による財政破綻で社会・生活の「断絶」を経験した。人々はどのように立ち上がってきたのか。その「断絶」と「再生」のプロセスを エスノグラフィーの手法を用いて学び、東日本大震災による社会の「断絶」から真の復興に向かうための考え方や仕組みづくりの示唆を得ていく。

「明るい未来のつくりかた」

⇒バックナンバー一覧