シャープは27日、電子機器の受託生産で世界最大手の、台湾・鴻海グループと、液晶パネル事業で業務・資本提携を行うと発表した。ケータイ産業のみならず、日本の電子産業全体にとって、大きなニュースである。
発表によると、シャープは鴻海グループ4社に対し第三者割当増資を実施し、669億円の出資を受ける。また同社堺工場の運営主体であるシャープディスプレイプロダクト社のシャープ持ち分の半分となる46.4%を660億円で鴻海グループに売却。合計で1329億円の調達することになる。
こうした動きを28日の株式市場は好感したようで、本稿執筆時点ではシャープの株は買いが殺到し、値がつかない状態のようだ。ただこれは逆に、いかに先般のシャープが危機的状況と見られていたか、ということの裏返しでもある。
今期の最終赤字が3000億円近くまで膨れあがるという見通しはすで公表されていたが、昨年12月末時点で30%を下回っていた自己資本比率が今後さらに悪化する可能性が、資本市場では指摘されていた。また中長期的には、今後の転換社債償還等、財務上のスケジュールを予定通りこなせるのか、といった懸念もあった。率直に「倒産リスク」が高まっていたとさえ言える。
今回の業務・資本提携は、現時点ではこうした懸念を払拭するものとして、評価されている。確かにこの提携をうまく使えば、近年シャープが抱えていた様々な課題を一挙に解決できる可能性もある。ただそれは、これまでの日本型電子産業が、すでに終焉に近づいている、ということをも意味する。
全体的な戦略の失敗
シャープに関しては、スマートフォン云々の前に、まず同社全体の動きとして、いくつか大きな躓きがあったように思える。
1つは、液晶パネルメーカーとしての戦略。従来、シャープは原則として、用途の全方位性、技術の先端性、そして自前主義に基づく垂直統合(部材から最終製品までを自前で作る)を重んじてきた。この戦略は、市場が成長フェーズにあれば、効率性(規模と習慣の経済性)が働くし、またノウハウの集積によりもたらされる知的財産権の蓄積にもつながる。
しかし市場が飽和状態(ないしは後退局面)において重要なのは、そうしたサプライサイドの生産性ではなく、市場の変化状況への適応だ。具体的には、迅速なマーケティングリサーチ、ブランド管理も含めた製品パッケージング、そしてグローバル市場におけるサプライチェーン管理による利益率の向上と事業機会の損失リスクの低減となる。
一見難しそうな話だが、単純に言えば、「高いモノを作ってもロクに数がさばけない時代なのだから、ある程度の安売り競争でも生き残れる術を身につけないとね」ということだ。そして、その動きが昨今のシャープにはできていなかった、ということであろう。