日本の子宮頸がん検診受診率は10年前には21.3%で、OECD加盟諸国の中で最低ランクだった。がん対策として政府が本腰を入れ、国・自治体・民間企業が協働した結果、自治体によっては受診者数が22倍に増えたところもあった。その手法とは?(医療ジャーナリスト 福原麻希)
子宮頸がんは女性の結婚・出産に関わる
20歳から、がん検診が受けられる
子宮頸がんは性交渉による感染症の一つで、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因となる。誰でも一生のうち、一度は感染する可能性があり、多くの場合、ウイルスは自然に排除される。だが、繰り返し感染することがあり、感染した状態が続くと、女性は子宮頸がんを発症する(*1)。
子宮頸がんは25歳から発症率が高くなり、20~30代の患者が多い(*2)。
問題は治療で子宮を摘出することもあり、その場合、出産をあきらめなければならな
い。
だが、子宮頸がんは全身のがんの中でも、唯一、がんになる前に検査(細胞診)で異常を見つけることができる。細胞診による子宮頸がん患者の死亡率減少は効果を示すエビデンス(科学的根拠)があり、特に日本の細胞診は世界的に精度が高い。
子宮頸がん検診は、20歳以上の女性は市区町村の住民検診でも、職場での検診でも2年に1回、受けられる。10年前、子宮頸がん検診の受診率は5人に1人(21.3% *3)で、OECD加盟諸国の受診率70~80%と比べて、ひどく低かった。
このため、国のがん対策推進基本計画にがん検診の受診率向上が明確に書き込まれるとともに、2009年から国主導の「がん検診受診率50%以上キャンペーン」が推進されるようになった。最新のデータでは子宮頸がん検診の受診率が42.3%(*3)まで向上したが、まだ道半ばといったところ。
つまり、日本ではがん検診の体制は整っているが、受診すべき人がうまく受けられていない。
*1)男性もHPVに感染すると陰茎がんや肛門がんができる可能性はあるが、その割合はとても少ない。子宮頸がんでは年間約2700人が亡くなる。
*2)出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
*3)出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(国民生活基礎調査)