長持ちする加工食品のルーツ長く保存できるパンやプロセスチーズや栄養強化食品のエナジーバーなど、現代の食卓に登場する多くのものには、戦闘糧食を作る時の技術が転用されている!(写真はイメージです)

要約者レビュー

 本書『戦争がつくった現代の食卓』表紙のタイトルのそばには、「軍と加工食品の知られざる関係」という言葉が添えられている。まさか加工食品と軍に関連性があるなど夢にも思わなかった。

『戦争がつくった現代の食卓』
アナスタシア・マークス・デ・サルセド著、田沢恭子(訳) 、384ページ、白揚社 、2600円(税別)

 しかし考えてみると、加工食品はなぜ加工される必要があったのか。現代の食品を見ると、その多くは長時間の輸送に耐えられ、長期保存が可能であるなど、品質維持の工夫が随所になされている。これこそまさに軍隊が食糧に対して求めたことだったのだ。

 戦争が起こり兵士が遠く海外へ派遣されるとなれば、大量の食糧を戦地へ送り届け、あるいは兵士のポケットに入れて持ち歩かせなければならない。戦地の気候はさまざまで、気温や湿度などによって食糧は傷み、お腹をこわす兵士もいただろう。これは戦争の勝敗をも左右するゆゆしき事態であった。

 この事態を解決するため、アメリカでは、陸軍が主導する研究によって、さまざまな食品技術が開発されたという。その流れの中で、例えば、フリーズドライ(凍結乾燥)技術を活かしたインスタントコーヒーや、味はそのままに水分を減らす低温蒸発製法により凍結濃縮果汁〈ミニッツメイド〉などが誕生した。〈プリングルズ〉チップスに入っている乾燥じゃがいもは、1950年代に陸軍と農務省が共同開発したものだ。

 そして、現代においても一般消費者向けの食品に対する軍の影響力は決して小さくない、と著者は指摘している。本書は、人間が生きるのに極めて重要な「食」について新たな見方を与えてくれる一冊である。(立花 彩)

本書の要点

(1) 栄養強化食品のエナジーバーや、長く保存できるパンやプロセスチーズなど、現代の食卓に登場する多くのものには、コンバット・レーション(戦闘糧食)をつくるときの技術が転用されている。そうした研究開発を行っているのが、アメリカ陸軍ネイティック研究所だ。 
(2) 国防総省からの研究資金が重要な資金源である基礎研究の分野では、どうしても戦争関連の研究テーマが選ばれる傾向にある。研究から生まれた食品加工技術が大手企業に譲渡されれば、一般消費者向けにレーション(糧食)に近い食品が提供されることになる。