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加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る

無責任論評社会なんて、もういらない!

加藤嘉一
【第1回】 2012年4月2日
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天国の父を想う

 2012年3月28日、実の父親が亡くなってちょうど2年になる。

 当時私は、上海の復旦大学に身を置いていた。上海の空を眺めながら、「今ごろお父さんは天国で何を考え、何をやっているんだろうなあ?また酔っぱらって人に迷惑をかけているのかなあ」なんて思いにふけっていた。

 ふと、父とよく交わした会話が脳裏をよぎった。

 長距離選手だった私は子供のころ、父の指導の下よく走っていた。一歳下の弟と共に、ぶっ倒れるまで走らされたのを昨日のことのように覚えている。走ることにおいて、弟は私よりも才能に富んでいた。私が情けなくも弟に離されると、父がメガホンを持ってこう叫ぶのだった。

 「おい、嘉一!何遅れてるんだ!兄貴として恥ずかしくないのか!腕をふれ!前を見ろ!胸を張れ!」

 喝を入れられて、気合が入ったものだが、心の中では「まったく指導するだけなら楽だよな。だったらお父さんが走ってみろよ」とつぶやいていた。

父の口癖

 正月は家族団らんでニューイヤー駅伝と箱根駅伝をテレビの前で観戦するのが常だった。「つなぐ」ことを大義名分とする駅伝は日本が世界に誇れる文化だと思う。応援しているチームの選手が垂れて遅れると、私は反射的に声を放つ。

 「おい、なに遅れてるんだよ。しっかりしろよ!」

 すると、横から父の鉄拳が飛んでくる。

 「だったら、お前が走れ!!お前はあいつより速いのか?自分が速く走れるようになってから言え、バカ。」

 隣で比較的クールな弟が、同じように「おい、なに遅れてるんだよ!」とつぶやくと、今度は私が「だったら、お前が走れ!」と父の口癖を真似たものだ。

 父と国会中継を見る。国会議員が無味乾燥な発言をしているのを聞いて、「おい、なに意味のない発言してるんだよ!」と愚痴ると、「だったら、お前が発言してこい!」と、これまたボディーブローが飛んできた。その後、私もよく同じ文句で父親の無責任な論評を批判したものだ。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る

 「だったら、お前がやれ!」
この言葉が意味すること、それは「対案の無い無責任な批判はするな」ということだ。もともと、この言葉は加藤嘉一氏の亡くなった父の口癖だったが、加藤氏は自らの行動規範として常に心に留めている。相手に対して意見するとき、必ず自らに問いかける。
そんな加藤氏が今、憂いているのは、日本社会にあまりにも無責任な批判、意見、論評が多いということだ。本連載では、日本社会に蔓延る無責任な論評を、加藤氏の視点で切り込み、加藤氏なりの対案や考え方を示す。

「加藤嘉一の「だったら、お前がやれ!」 思考停止のニッポンをぶった切る」

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