ニュースを聞いて「やはり」と思った
EMS企業との提携に踏み切ったシャープ
3月27日、経営不振が懸念されていたシャープは、世界最大のEMS(電子機器受託サービス)である鴻海(ホンハイ)精密工業との業務提携を発表した。このニュースを見て最初に頭に浮かんだことは、「やはり!」という感覚だった。
液晶関連事業に傾斜してきたシャープにとって、薄型テレビ価格が予想をはるかに上回るスピードで値崩れしたことは、ほとんど致命的な要素だった。当然、経営状況は悪化し、生き残りをかけて財務体質を建て直すことが急務となった。
そこに手を差し伸べたのは、もともとは台湾企業ながら、現在では世界80を超える国に生産拠点を展開し、100万人を超える従業員を抱える世界有数のITメーカーである鴻海精密工業だった。
同社は、アップルとの関係が親密で、中国の子会社・フォックスコンでは、iPhoneやiPadなどアップルの主力商品を大規模に生産・供給し、事業を飛躍的に拡大している。
今回鴻海精密工業は、シャープ本体に669億円を投じて株式を取得し、議決権の約10%を握る筆頭株主になる。同時に同社の郭台銘(テリー・ゴウ)会長個人が、シャープの堺工場を運営するシャープ・ディスプレイ・プロダクトの株式46.48%を660億円で取得し、同工場をシャープと鴻海が共同運営することになる。
これによってシャープは、合計約1300億円の現金を手に入れる同時に、堺工場で生産される液晶の半分を鴻海に販売することになり、同工場の操業率は大きく上昇することになる。
今回の合意は、経営悪化に苦しむシャープにとって必要不可欠な救済になる一方、これから新型の「Apple TV」の受注を受けたい鴻海にとって、シャープの堺工場という優秀な液晶生産拠点を手に入れるメリットがある。