「君はサトイモじゃないよね?」で笑いを取る型を真似ていた

 中居さんが、笑いを取るトークを身に着けるために参考にした1人が、「うたばん」という音楽トーク番組を一緒にやっていた、とんねるずの石橋貴明さんのはずです。中居さんの番組を昔から見ていた人の中には気づいた人もいるかもしれませんが、一時期、中居さんの笑いの取り方は、石橋さんのコピーのように見える時代がありました。

 例えば、石橋さんは人の見た目を「君は〇〇じゃないよね?」と言って笑いを取るトークフォームを多用していました。具体例をあげましょう。石橋さんは自分の番組に登場した、色黒・丸顔・ハゲているという三拍子が揃った素人の中高年の男性に対して、「あれぇ?君はサトイモじゃないよね?」と言って笑いを取っていました。

 そうやって、人間をサトイモに似ているとか、ちょっと失礼な例えを言う事で笑いがとれるというトークの法則は、ボクシングで言えばパンチの一種、空手で言う型のようなものです。つまり、それをマスターすれば確実に笑いが取れる技=トークフォームなのです。

 記憶にある方もいると思いますが、一時期の中居さんは、その石橋流のトークフォームを完全に自分のものにするため、「ねえねえ、君は〇〇じゃないよね?」と、誰かを物に例えるというトークフォームで積極的に笑いを取っていました。今だって、中居さんの笑いを取るトークを細かく聞いていると、少し「石橋イズム」を感じさせるトークをする事があるはずです。

 このほかにも中居さんは若い頃、タモリさんの司会のやり方を参考にした話とか、ジャニーさんに言われて司会のためのメモ帳を用意した話など、トークフォームを自分に叩き込んでいった過程の苦労話を実際に語っています。今や大物MCの中居さんですが、このように20代の頃には積極的に自らの脳にトークフォームを叩き込んでいった時期があったのです。「数をこなして慣れた」とか「恵まれた」のではなく、トークフォームを身につけたことが飛躍のカギなのです。

 つまり、トークの実力というのは、生まれつきの才能やセンスではなく、努力して身につける技術なのです。中居さん以外の人にも注目してみましょう。例えば、同じ師匠についているお笑い芸人の方々は、笑いの取り方が似ていますよね。その理由は、まさしく、弟子たちが皆、師匠から同じトークフォームを受け継いでいるからです。

もちろん、一般の人は、お笑い芸人や中居さんほどのトークの達人を目指す必要はありません。私はこうしたトークフォームを研究していて、『1秒で気のきいた一言が出る ハリウッド流すごい会話術』という本に77通りのトークフォームを紹介しましたが、この中から必要と感じたいくつかのトークの基本フォームを学ぶだけで、「話が上手」と言われるレベルの即興トークができるようになってしまうのです。

 繰り返しますが、トークが上手になるのにも、アドリブで気のきいた一言が言えるようになるのにも才能やセンスは不要です。「型」を身につければいいのです。しかも、その型のパターンは欧米ではとうの昔に確立しているのですから、それを練習してみない手はないと思います。