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スマートフォンの理想と現実

端末メーカーは疲弊、通信事業者も過当競争へ
後退局面が目立つ日本ケータイ産業への処方箋

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第23回】 2012年4月12日
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 「何か明るい話題はないですかねえ…」

 お名前を挙げるのは控えるが、通信産業の改革に長年砕身され、先進のビジョンと抜群の行動力で、業界を牽引してきた大先輩と、先日お話をしていた時に、どちらかともなく出てきた言葉である。先方も私も、リスクは意識しつつ可能性を見出すことを旨とする気質を自認しており、それゆえになおのこと厳しさを感じている。

 確かに、状況を直視すると、これ以外の言葉がなかなか見つからない。スマートフォン時代の通信インフラの課題は重くのしかかっているし、MNP(モバイルナンバーポータビリティ)を巡る事業者間競争はもはや過当といってもいい状況だ。サービス面でも、ソーシャルゲーム業界におけるいわゆる「ガチャ」の問題に関連するアイテムの現金取引や、プライバシー情報の問題など、難題山積である。

 重苦しさに拍車をかけるのが、端末メーカーの先行きが見通せなくなっているということ。前回触れたシャープと台湾・鴻海グループの提携発表以外にも、ソニーの業績悪化や、東芝の完全撤退(携帯電話子会社である、富士通東芝モバイルコミュニケーションズの保有株式を富士通に売却)など、とかく後退局面が目立つ。

 新しい試みが頓挫しはじめているのも、混沌を深める一因となっている。シャープの発表の陰で目立たなかったが、先日NTTドコモを軸とした合弁事業である「通信プラットフォーム企画株式会社」の解散が発表された。

 この会社は、富士通、富士通セミコンダクター、日本電気、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、Samsungの5社で、主にLTE向け半導体の開発と販売を行おうと、昨年12月に設立されたもので、準備会社の期間の後に今春から取り組みを本格化させるはずだったが、わずか3ヵ月での清算である。

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クロサカタツヤ[株式会社 企/株式会社TNC 代表]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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