中国共産党中央委員会は4月10日、薄熙来(ポー・シーライ)氏の中央政治局委員、中央委員の職務を停止したが、それに先立つ3月15日には同氏の重慶市書記の職を解いた。ちょうど同じ3月15日の夜、薄熙来氏が初めて政治の表舞台に立った遼寧省の大連市では、多角経営により轟々たる名声をあげた大連実徳グループ(以下、実徳)の徐明董事長(会長)も行方不明となり、巷では政府の関連部門に連行されたという噂が流れている。同社の主力銀行である中国建設銀行は、その日から実徳への貸し剥がしを始め、実徳は突如、惨憺たる状況に陥った。(在北京ジャーナリスト 陳言)
政治の舞台で二十数年間派手に活動してきた薄煕来氏の後ろには、政商の実徳グループが控えていると言われている。同社は、薄煕来氏の庇護で急成長を実現し、また薄煕来氏の失脚によって、いち早く消えようとしている。
薄氏の金脈を調査するにあたり、重慶市で実施された反社会勢力と結託した企業を撲滅するキャンペーンの際に、薄氏らによって没収された金の行方も注目されている。中国のインターネットでは、実徳などで金を集め、重慶から暴力団を一掃すると称して、民営企業の利益をこぞって略奪していく、というストーリーを描いている。真相はまだ不明だが、薄金脈については追って公式発表を整理して明らかにしたい。
改革開放後の政変は、いままで企業にははあまり影響がなかった。現在収監中の元北京市長・陳希同、同じく収監されている元上海市長の陳良宇も、中央委員の職を解任された際、企業には大きな変動はなかった。
今度の重慶政変は、過去の例を超えて経済に影響している。薄氏解任後に重慶自治体は4月11日、12日に、薄事件と関係なく、1万人以上の集会が開かれ(インターネットでは3万人と言われている)、社会に不穏な動きが出ている、と対外的に公表した。「関係なく」という表現から逆に、薄熙来氏の人事は、大きな影響を与えていることを垣間見ることができよう。