「時空を制する」ことによる経済空間の形成

 UberもAirbnbも、サービス供給側と需要側両方の人々のネットワークを支えるプラットフォームとして、評価を軸とした経済空間を構成し、必要なすべてのアクションをスマートフォン上で完結するというテクノロジーによって実現されたものであるが、重要なのは、それが、「評価」という人間の感情の上で作り上げられた人的空間であることである。

 そして、形成された人的空間は、UberならUber、AirbnbならばAirbnbが、自らのプラットフォームで管理しているように、誰かしらが主体的に管理することによって、「コミュニティ」となる。

 時間を制するとともに「コミュニティ」というレイヤーによって人的空間を制することは、そこに存在する個々人の「評価」という感情を金銭換算できる経済空間を生み出すことを意味するのだ。

 そして、そのとき、経済的な便益を享受できるのが企業だけでなく、個人の一人一人であることに着目する必要がある。

 一人一人の個々人は、コミュニティに属することで、主体的に自分の時間を付加価値化した上で収益をあげる=「マネタイズする」ことが可能となる。

 必ずしも「企業」という一つの中央集権型の主体に属することなく、様々な断片的な時間を、それぞれのコミュニティにおいて「マネタイズ」できることが非常に大きな変化である。

 一方、企業はこれらのコミュニティを自らが構築したプラットフォーム上で運営・管理することで、同じく収益をあげる=「マネタイズする」ことが可能となるのはもちろんだが、そのコミュニティを永続的に維持しながらも、そのコミュニティを拡張したり、複数のコミュニティを形成することで、全体のコミュニティ規模を拡大していくということが、ビジネスを永続的なものにしていく上では重要となってくる。

 ディスラプション(破壊)の時代において、人的空間を制する=コミュニティの形成にはどのような意味があり、特にディスラプターと目される企業は、それをどれだけ重視し、実際にどのような取り組みを行っているのか、次回以降でさらに見ていくことにしよう。

(この原稿は書籍『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)