大義なき参議院の定数増
何も是正しない「一票の格差」の是正
7月18日、参議院の定数を6議席増加させる公職選挙法改正案が衆議院本会議で可決成立した。今国会の終盤での突然の出来事に、筆者は唖然(あぜん)とした。法案は突如、参議院で提出された。12日に参議院本会議で緊急上程され、可決。衆議院はほぼ素通りして成立した。
同法律は来年の夏に実施予定の参議院議員選挙から適用される。埼玉県の当選枠が3人から4人に増えるとともに、「政党が自由に当選する人を決められる」比例代表の「優先」当選枠を2人設けられる。
大義名分は一票の格差の是正だそうだが、人口減の時代、しかも増税が続く中での議員の増員は、小難しい理屈を持ち出すまでもなく、直感的に理解されにくいのではないか。
議員定数を増やせば少数政党の方に有利……と主張する学者もいるが、そんな意見は机上の空論でしかなく、もちろん自民党にとって有利だからこそ与党が率先してやっているのだ。そしてそれは、盤石な長期政権を築いていた安倍政権が、森友・加計問題で支持を失いつつあることと無関係ではない。
立憲民主党の村上賀厚氏(大阪府第一区支部長)は、「自民党の参院選の定数増法案の狙いは、合区により議席を取れなくなった身内議員の議席確保策であり、党利党略そのもの。支出を抑えようと努力しているこのご時世に、議員増で経費増という法案を短絡的に出せる感覚にはあきれる」とばっさり切り捨てる。
一方、与党案に対抗して、参議院の議席数を1割削減する対案を提出した日本維新の会の片山大介参議院議員は、「自民党は参議院の一票の格差の是正を理由にしているが、選挙区だけでなく比例区まで増員しているのは明らかにおかしい。せめて、選挙区で増やすなら、その分比例区で減らして増減なしにすべきではなかったか」と憤りを隠さない。